第2話

 時々ふと、不安になる。このまま頑張り続けて子供たちが離れた時。もう皺くちゃなやつれたお婆ちゃん。だからその時あのひとが必要なんだ。それまでにお互い頑張って、少しでも余裕を作ってさ、車中泊で日本一周。わたしにはそんな夢がある。

 それをあのひと「都合良い」って言うの。「今会わないなら会いたくないんだ」って。会わないんじゃなくて、会えないんだよ。「好きだと言わないから嫌いなんだ」って。言わないんじゃなくて、言えないんだよ。

 

 会わせてよ。


 言わせてよ。


 泣きたくなるくらい悲しくさみしく辛いのに、それすら忙しさに流されて、涙にかたまらない。あのひとがわたしのせいで苦しんでるなら、わたしだってあのひとのせいでこんなに大変なんだ。

 

 入学式の振替えで土曜日も出勤、一日だけのお休み。桜が満開。ゆっくりしたいから、花見は連休の時に連れてってやろうかな。それまでに散ってしまうだろうか?あのひとの居る山里では、桜はGWに咲いて花見の習慣はなかった。春には芽吹きの中の春祭り。あのひといつも飲み過ぎて、嫌な思い出しかないなあ。


 あのひと、飲みすぎてないだろうか?


 一日の休みは短い。日中もう暑い。暑さはあの村を懐かしくさせるから、しばらくは嫌い。もともと好きではないけれど、寒いよりはましだった。今は寒さが少しだけ恋しい。お買い物で終わる休日。節約した買い物に、なるべく安くあがる外食。上の子たちはついて来たがらなくなってるから、テイクアウトとか面倒だ。たまにはあのひとと全員揃って美味しいものを遠慮なしに食べたい。あのひとのお料理とても美味しいから、お金があればみんな連れて行きたい。行けばあのひと、お金は取らないし。タイヤの心配ももう無いし。

 それでも今は、仮にわたしたちが行けたとしても、あのひと大変かな、って思っちゃうんだ。

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