第133話 あんまり苛立たせんじゃねぇぞ? 豚


 本当に、わたくしは男運が無いのだと嫌になって来る。


「これ以上手わたくしたちを解放しないのであればお父様にいいつけますよ?」

「おぉ怖い怖い。けれど、俺と一線を越えても果たして同じことを言えるかな? そうなってしまっては傷物になった事を隠さなければならないのだが、隠すという事は俺に弱みを握られるという事でもある。まぁ、その場合は俺の妻と成るのであれば、今日これから起きる事は墓場まで持って行くと約束しようっ!!」


 そして豚は勝ち誇ったような表情で『ぶひゃひゃひゃひゃっ!!』と下品な声で笑いながらそんな事を言うではないか。


「おい、リリアンヌ。武器を地面に捨てろ。さもないと……分かるよな? お前が下手に反撃しようものなら大事なお姫様が俺の部下に殺されるかもしれないなぁ? 俺はそんな事少しも思っていないけど、俺の部下は頭が悪い者が多くてねぇ」

「……くっ」


 いくらリリアンヌがこの豚よりも強いと言えども多勢に無勢、リリアンヌは悔しそうに武器を地面に置くと、即座に他の男がリリアンヌを捕らえて身動きができないようにするではないか。


「待たせてしまったね、フィリアーナ様。ではこれから俺と別室へ行って気持ちいい事をいたしましょう。なに、天井のシミを数えている間に終わりますから」

「い、嫌だ……っ! 誰か助けて……っ!」


 なんでこんな事にならなければいけないのか。


 わたくしがいったい何をしたというのか。


 婚約者はカイザルだとお父様から言われるし、こんな豚に犯されてしまうかもしれないし……今日は本当についていない。


 いやだ。


 カイザルと婚約を結ぶのは勿論、こんな豚にわたくしの初めてを捧げるだなんて猶更嫌だ……っ!!


 誰か……誰でも良い……わたくしを助けてくださいましっ!!


「なぁ、流石に皇族を無理やり犯そうとするのはヤバいんじゃないのか? というか以前勝手に頬へキスした俺が言えた義理ではないのだが、未遂でもこれはかなりヤバいと俺は思うが?」

「…………カ、カイザル……っ!?」

「……おや? だれかと思えば低能、無能、貴族の恥で有名なカイザルくんじゃあないか。悪いけど俺の邪魔をするんじゃねぇぞ? ゴミが。おい、このバカに痛い目を見させてやれ」


 そんなわたくしの願いに呼応するかの如く、誰かが割って入ってくれたのだが、それが一体誰だろうかと姿を見てみると、わたくしを背中で隠すように立ってくれているのはあの忌み嫌っていたカイザルではないか。


「あ? 誰が誰に痛い目を見せるって? なぁ? 教えてくれないか? 俺は今むしゃくしゃしてんだよ。あんまり苛立たせんじゃねぇぞ? 豚」


 そしてカイザルはまずわたくしの手首を掴んでいる豚の腕を蹴り上げて強引に引き剥がすと、わたくしをお姫様抱っこの要領で抱きかかえ、襲ってくるゴミ共を蹴り技だけで次々と倒していってしまうではないか。

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