第91話 なんだかんだで根は良い娘

◆ 



 取り敢えずその日は日も傾き始めているという事でゼフの家で一晩過ごして翌日。


 俺は朝早く起きると寝汗を拭いに井戸がある場所まで向かい、井戸水を頭から被り寝汗を流す。


 正直、ママゾンストアから『どこでも簡易シャワー』を購入して温かいお湯で汗を流したかったのだが、これはこれで乙というものだろう。


 たまにはこういうのも良いものである。


「覗きが趣味なのであればこそこそと俺の水浴びを覗くのは仕方がないとは思うのだが、男性の裸体を見たいのであれば、一言言ってくれれば見せてやるぞ? 流石に下部分は見せられないがな」

「ち、違うわよっ!! 変な事を言わないでちょうだいっ!! そもそも私はまだアンタの事を信用していないのだから、こうやって変な事をしないか見張っていただけで、別にあんたの裸体を覗くためにこそこそしていた訳じゃないわよっ!!」

「まぁ、色恋や異性が気になってくる年頃でもあろうし、別に恥ずかしがる事では無いとは思うのだが、まぁそう覗いていた本人が言うのであればそういう事にしておいてやろう」

「だから違うと言っているでしょうっ!!」


 そして俺は先ほどから付けていた者に向けて『俺の裸を見たいのであれば見せようか?』と問いかけると、顔を真っ赤にしたゼフの娘が垣根から出てくると必死に否定し始めるではないか。


「それで、お前は俺に何か言いたいことがあるんじゃないのか?」


 そしてゼフの娘が俺に何か言いたそうにしていたのを昨日から感じ取っていたので、このままつけられても面倒くさい為、言いづらいのであれば俺から言い出しやすくアシストをしてやれば良いだろう。


 これでゼフの娘に後をつけられる事もなくなると思えば安いものである。


 まぁ、別に撒こうと思えば撒けるのだが、それは問題の先送りでしかなく、ゼフの娘が俺に何か言いたい事が無くなった訳ではないしな。


「…………本当に今日から開拓に行くの?」

「まぁ、そうだが?」

「……やめなさいよ。私が殺したみたいになるじゃない」


 あの後ゼフたち両親からこっ酷く叱られたのか目を泣き腫らしており、少しばかりしおらしくはなっているようなのだが、それはそれとして昨日俺に言った売り言葉を気にしている事が窺えてくる。


 なんだかんだで根は良い娘であるようだ。


「というか、俺が死ぬ事が既に確定しているような言い方はどうなんだ?」


 しかしながらそれはそれで、絶対に開拓なんてできないと言われてしまうと更にやる気がでてきてしまうのでこの娘の言葉はむしろ俺にとっては逆効果であると言えよう。

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