第80話 悩みの種



「あ、あが……っ、おやめください………やめ……っ」


 そして俺はこの使えないクズの頭を鷲掴みにしてそのまま丸く熟れた瑞々しい果実のように握りつぶす。


「ったく、部屋を汚しやがって、最後まで俺に面倒をかけてくるあたりお前は使えないんだよクズが。おい、ここを掃除しておけ。俺はとりあえず聖ロイセス教国に一回戻って事の顛末を報告してくるわ」

「「「かしこまりました」」」


 結局このゴミ屑のせいで俺に本国へ報告しなければならないという面倒な仕事が一つ増えてしまったではないか。


「ったく、親父ももう少し柔軟な思考ができればいちいちこんな面倒な報告など念話で終わらせる事ができるというのに……生き過ぎて脳みそが石化し始めたじゃないかってくらい固い思考してっからな……。正直本国まで戻るのは面倒くさいから行きたくないのだが、怒るとダルイしさっさと行くしかないか……」


 しかしながらいくら面倒だと言っても流石にこればかりは報告しない訳にはいかない為俺はここの掃除を使用人たちへ任せて聖ロイセス教国に一回戻るのであった。



◆主人公side



 あれから奴隷も何故か大量に増えたおかげでロレーヌ領での麦焼酎や日本酒作りはかなり順調に進んでいた。


 しかし、そもそもこれらは働き口が無くなったロレーヌの領民達の雇用先に作ったという節もある為、新たに手に入れた奴隷たちを全員回す事ができずにいた。


 俺からすれば別に無理に働かなくても良いとは言っているし、俺自身スローライフを目指しているので何故こんなに皆キラキラとした目で『何でもいいので働かせてくださいっ!! ご主人様の役に立ちたいのですっ!! その為であればお給料はいりませんっ!! 休日も必要ないですっ!! むしろそちらの方がご主人様の役に立っていると実感できますのでっ!!』と口を揃えたようにだいたい同じことを言ってくるので、どうすれば良いのかと悩みの種の一つになっていた。


 俺には『ご主人様の為に賃金無しでも働きたいんですっ!!』と言ってくる奴隷たちが鍛え上げられた社畜戦士に見えて仕方がない。


 どうしてこうなった?


 とは思うものの、実際にそうなっているのだからどうにかするしかないだろう。


 ちなみに賃金無しはあり得ないので、もし他に事業をやり始め、そこで働いてもらうとしても労働にみあった賃金と週二日の休日、年二回のボーナスに年末年始、年度初め、初夏には長期休暇を与えるつもりである。


「カイザル、少し良いか?」

「はい、何でしょうか? お父様」

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