第10話 俺のスローライフ計画


これがうまくいけば、前世の記憶が戻ってから密かに考えていた俺のスローライフ計画が一歩前進するだろう。


 正直言って貴族界のあれやこれや、魑魅魍魎たちと足の引っ張り合いや駆け引き腹の探り合い、それとは別にパーティーにゲスト側として出席するのはまだしも、逆にこちらが主催としてパーティーを開催したりなど、その他諸々を含めて面倒くさいと言わざるを得ない。


 それら面倒事はマリエルや他の人工知能搭載ロボたちに任せ、俺は不労所得を手に田舎でのんびり鶏や野菜などを育ててのんびりした時間を過ごしたい。


 特に前世の俺は国に所属している国家魔術師の戦闘員であった為かなり多忙であり、自由な時間等は殆ど無かった。


 たまの休日ですら出撃の連絡が飛んで来る為、気が休まる日など一日たりとも無かった。


 確かにその分見合った給料は貰っていたのだが、それによって犠牲にして来た時間は金では取り戻せないのだ。


 高給取りとなり美味い飯を食べたり高級車を買ったりタワマンに住んだりしても、それらを楽しめるだけの余裕が無いのであれば、低収入でありながらものんびりと過ごしている人たちこそが贅沢な人生の過ごし方であるとさえ今では思えてくる程には、当時は追い詰められていたことが分かる。


 勿論その余裕がない状態ですら他人をマウントにできる道具の一つであると思えるくらい高いプライドを持っていたり、そもそも仕事自体が好きで休みなんか要らないって思える人であればまた受け取り方は変わってくる事は理解している。


 ただ単に俺はそっち側では無かったという事だったのだ。


 そして、今回シュバルツさんとの契約は俺が死ぬまで続くので、ハッキリ言って金貨三千枚など優に超える資産を生み出してくれる事は約束されたようなものである為、余程の事が起きない限りは俺のスローライフ計画の偉大なる第一歩となる事は間違いないだろう。


 その点に関してはハッキリ言って記憶が戻る前の俺に、オリヴィアとの婚約をしてくれてありがとうと褒めてやりたいくらいである。


 そしてこれらを『シュバルツさんの領地で事業を起こす事にして、その売り上げを俺が死ぬまで吸い上げる』と、ふわっとした内容を伝えると『さすが我が息子だっ!! 他人の領地と領民を使って事業を興すなど、金貨三千枚など安いものだなっ!!』とご満悦ではないか。


 でもまぁ、確かに見方を変えればシュバルツさんの領地の一部と産業の一部権利を奪ったようなものなのでお父様が喜ぶ気持ちも分かる。

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