おやっさんと俺の異世界二人旅 ~少年化した元頑固ジジイな上司を連れて超絶殺伐な異世界を縦断しています~

めで汰

第1話 おやっさん、クソガキになる

 想像できるか?

 俺のことを嫌ってると思ってたおやっさんが、俺をかばって撃たれるだなんて。


 想像できるか?

 この日本で、不審者に職務質問しただけで撃たれるだなんて。


 想像できるか?

 刑事になって二年。

 誰ともわからない相手に撃たれて殉職するだなんて。


 想像できるか?

 撃たれた俺とおやっさん、二人揃って──。


『異世界』で目を覚ますだなんて。


 しかも。


 そのおやっさんが……。



『クソガキ』になってるだなんてぇぇぇぇぇぇ!



 ふんげぇぇぇぇぇぇぇぇ!


 ほんがぁぁぁぁぁぁぁぁ!


 どういうことなんだよこれぇぇぇぇぇぇぇ!?


 想像なんかできるわけないだろ、ばぁ~かばぁぁぁぁぁぁか!


 はぁ……はぁ……。


 以上、俺の心の声でした。



 ◇



 ダルダルの白いランニング姿。

 めちゃ短い半ズボン。

 いがぐり頭。

 鼻垂れ。

 生意気そうなツリ目。

 そして、実際に生意気。


 そのへんで拾った木の枝をブンブンと振り回す昭和感丸出しな少年が俺に向かって口を開く。


「おぅ、兄ちゃんさぁ! 大人なんだからどうにかしろって! 頼むぜ、まったくよ~!」


 イラッ。


「あのさぁ、一応もう一回確認するけど名前は?」


大石幹雄おおいしみきおだっつってんだろ! 一回で覚えろよ、ばぁ~か!」


 ピキピキっ。


 大石幹雄。

 おやっさんと同じ名前。

 しかも。


(おやっさんが事あるごとに言ってた子供時代の姿に瓜二うりふたつなんだよな……)


 これはおやっさんだ。

 俺の直感がそう告げる。


『おい、タマ! ごちゃごちゃ言ってねぇで自分の直感に従うんだよ!』


 おやっさんのよく言っていた言葉。

 昔ながらの刑事デカだったよなぁ。

 ……近年では通用しなくなったタイプの。

 でも今は。

 その直感に従わせてもらうとしますか。


「ミキオくん? あのね、ここはたぶん異世界だと思うんだ。だって……」


 俺とキミは撃たれて死んだんだから。


 そんな俺達がこうして生きてるだなんて異世界くらいしか考えられないじゃん。


 あ~、もしかしたらあれかもな。

 おやっさん、信心深かったから。

 毎朝神社にお参りしてから出勤してきてたもんなぁ。

 お守りなんかも持ってた気がする。


 ……お守り?


「ねぇ、ミキオくん? その首から下げてるの……」


「あ? これ? なんで俺こんなの持ってんだ?」


 子供おやっさんがヒモに手をかけて持ち上げる。

 おやっさんの首から下げてたお守り。

 欠けてる。がっつりと。


(あぁ……これが守ってくれたってことか……)


 奇跡。


 あるんだな、そんなこと。


「それはね、ミキオくんを守ってくれたんだよ」


「は? 何言ってんだ、お前? っていうか、俺記憶がないんだけど? お前誰だよ?」


 この口の悪い少年。

 クソガキ化したおやっさん。


「俺は玉井安吾たまいあんご。キミの──」


 守ろう、俺が。



相棒バディ、だよ」



 前の世界で、おやっさんが俺を守ってくれたように。


 こうして、俺とクソガキ化したおやっさん。

 二人の異世界を巡る旅が始まった。



 ────────────


 【あとがき】


 読んでいただいてありがとうございます!


 この作品は『クソガキおやっさん&主人公による尊い系友情異世界漫遊記』です!

 少しでも「続きが気になる!」「クソガキおやっさんかわよ……」と思われたら「☆☆☆」かハートをお願いします!(切実)


 毎日更新で二万字~六万字の間での完結を目指す中編を予定してます。

 ぜひ最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る