12 本来の目的
あの後、ラグナと別れたレイン達は、本来の目的を果たすためにシエスタの実家へと向かって歩き始めた。
……そうだ、これが本来の目的だ。
色々と有って見失いそうにはなるが、此処から先の事が本来の目的。
……もっとも今現在、アヤの抱えている事も主目的に負けず劣らず大切な事ではある訳で、どちらが上とか下とかは無いのだろうが。
(……いや、どちらかで言えばアヤの方が上か)
道中レインはそう考える。
それは別にシエスタを軽んじている訳ではなく、ただ単純に今生きている人間の事の方が大切なのは当然だろうという事だ。
当然、あくまで比較すればという話。
軽んじていたとすれば、態々遠出してきていない。
「あ、そっちの角を曲がった先っすね。もうすぐそこっす」
そして当初とは違い先導はしないものの、レインの後ろに付いて案内してくれるアヤの言う通りに進んでいるうちに、どうやら目的地に到着しかかっているようだ。
……そしてそれは、今あまり近寄らない方が良い場所に近づいているという意味でもあるが。
「とりあえず誰も居なさそうだね」
「ただ念の為俺達の影に隠れる感じで行こう」
「そうした方が良さそうですね」
「……申し訳ないけどお願いするっす」
今のアヤはあまり実家と関わりたくないような感じな訳だが、それでもその実家の隣が今回の目的地であるわけで……どうしたってそのすぐ近くを経由せざるを得ない。
その過程で家族とばったり会うことが無いか。
その点はかなり注意しなければならない。
……何かを隠している事を認めてくれたおかげで、この位の事は堂々とやってやれる。
(……とはいえ、時間の問題か)
今日一日は滞在して出発は明日の予定な訳だが、その間で問題が起きない気がしなくなってきた。
というのも道中……ラグナの言う通りほぼ全員が顔見知りである村の住民達が、アヤと顔を合わせているからだ。
皆が触れにくい事に慎重に触れるように、帰ってきても大丈夫かと。
一応同行者であるレイン達が事情を把握しているかどうかが分からないが故か、表情から色々と感じ取ったのか、詳細には触れずにそんな事を聞いてきた。
当然、そこからは色々な配慮が感じ取れて、そうした配慮をしてくれるようにアヤの存在がこの村で受け入れられている事はよく分かった。
分かったが……横の繋がりが強い田舎は情報の伝達が早いと聞く。
それ故にアヤが帰ってきた事が、かなり早い段階でアヤの家族に伝わる可能性がある。
当然悪意ではなく、善意のすれ違いのような経緯で。
……だがとにかく、今この瞬間にアヤと家族が顔を合わせるような事は無く。
レイン達はシエスタの実家に辿り着いた。
呼び鈴を鳴らし、家主が出てくるのを待つ。
そして数秒待って、扉が開き。
「はい……もしかしてあなたが」
「お手紙を頂きました、レイン・クロウリーです」
シエスタの母親と思わしき女性と顔を合わせた。
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