第2話 「叫べばあの子の耳元」
「殺人未遂11件、強盗14件、窃盗罪21件など諸々か...」
机の上に並べられた資料を片手に気になる文章を見つける
「なになに...同級生が...埋まりつつ...?〇〇が...?はぁ。またとんでもない生徒を連れてきたな」
「ですが彼女は優秀です。こちらの資料をご覧ください。」
渡された資料を手に取る
「ふむ。幼少期は孤児院で過ごし優秀な生徒として学費免除となり私立の中学校へ入学する。この時に里親は投げ出した、か。
次の里親が見つかる前に別の中学校へ転校することになる。
そしてその中学校でも生徒の口に爆竹...?
ありえん。煙はどこから出るんだ。」
「んっふん。」
「失礼。軽いジョークさ。なるほどな。
彼女の優秀さを評価して色んな学校は入れたがるが直ぐに問題を起こし転校するはめになっている。
そして学校側は評判のためにそう言った事件を隠すのか。
だからスムーズに転校できるのだな。
特に酷い事件はこれだな。足を××××。
はっ。まるで悪魔だな」
「ここは悪魔を宿している生徒を迎える場所ですよ。」
「はっはっは。そうだったな。...君がもう少しでここに来ることを楽しみにしているよ
青崎アリスくん。」
私は手錠を掛けられて車に乗せられている。
道中一人の男の首にナイフを刺したからだ。
私が立ち寄った店で食事をしていた際、
「女がナイフを使うな」と言われたから刺した
すぐに捕まりこうしてパトカーに乗せられている。パトカーには今月で30回は乗っている。
ある意味個人タクシーだ。
だるいのはこの手錠。前は外せたのに今はより厳しいのになっている。
「あなたが保護者ですか?」
「いいえ。私は彼女の入園先の担任です。」
「でしたら彼女を預けることはできません。
あなたの命も考えて」
私は前にいる太っている警官に唾を吐く。
隣には知らない人。
お高く気取っているのが気に食わない。
この手錠を早く外してくれ。
「私達の学園は国家に関係するプロジェクトですので。こちらを。」
「...私には判断できません。上のモノを連れてきます。」
女は私を見てこう言った。
「貴女はこれから地獄に行くのよ。楽しみ?」
「誰がお前みたいなマヌケについて行くんだ?」
「無駄口は終わりよ。私に従いなさい。
さもなくは貴方は有罪よ。知っているのかしら。少年法が改正されてあなたは捕まるのよ。」
「捕まってもいいさ。お前みたいなマヌケがいなければ」
「どちらにしろ拒否権はないの。あなた、だって悪魔を宿してるじゃない。」
あれは2日前。
私は夜中、パトカーに乗っていた。
その時の運転席の警官はとても鼻につくやつでイライラが限度を越していた。
だから私は可哀想なふりに体調を崩した演技をして外に止まってもらい、警官も出てきた隙に腹を一発蹴ってパトカーを盗んだ。
手錠が邪魔くさかったが運転できないことはなかった。がその時は少しミスをしてしまった。
ブレーキとアクセルを間違えてガソリンスタンドに車体もろともつっこむ。
爆発と共に炎上し、周りは火の海になった。
周りの人間の悲鳴が遠くまで聞こえる。
その環境音を静かに聞いていても良かったが燃え盛る車から出なければならなかった。
だが手錠が邪魔で扉が開かない。酸素不足か意識も遠のいていく。
その時私の前に悪魔が現れた。
小さい悪魔だったが今でもあの笑い顔の気味の悪さを覚えている。
「僕と契約してよ!そして善人も悪人も殺すんだ!魔法少女として!」
「まほう...少女...は、面白いこと、があるの、か?」
薄れゆく意識の中悪魔に問いかける。
「もちろんだよ!君も気にいるはずさ!涼しい地獄も悪くないでしょ??」
私はニヤつきながら答える。
「まぁね」
気がつくと手錠が外れていた。
私は急いで車から飛び出す。そして爆発と同時に悪魔からプロポーズを受ける。
「君は僕が探していた人材だ!僕よりも立派だよ! 悪魔として」
悪魔と契約すると手の甲に紋章が浮かび上がる
そして命を狙われやすくなる。
それは人からも、悪魔からもだ。
「よく聞きなさい。これから向かう場所は世界からも選りすぐりの魔法少女達が集まる学園よ。もちろん悪魔と契約した方の人達。
やることは簡単だわ。
正しい世界にするために善人も悪人も殺しなさい。それが私達の堕天使様の命だわ。」
パトカーではない車の中でまた手錠かけられた状態の私が話をまともに聞くわけがない。
私にとって重要なのは面白いかor面白くないか だけだ。
私が一番最初に面白いと感じたのは5歳の頃。
夜遅くに同じ部屋で寝ていた子の耳に穴を開けて悲鳴を聞いた時だった。
単純な嫌がらせが好きなわけではない。
悪人ぶっている善人も、善人ぶっている悪人も
可愛いくないのに可愛いふりをしているアイツも、ただ単に気に入らない奴が嫌いなだけ
そして気に入らないヤツを潰すときも、思いがけない反抗も大好物で面白い。
時々思う。私が開けてきた穴に叫べばあの子の耳元に届くのか、と。
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