第三章 魔女の因果
第19話 13人の魔女
この国の惨状、常識の通じる次元ではないことは理解している。
「魔女同士の戦い。いえ、戦争ですわね。」
この世界には十三人の最強と言われる魔女がいる。
傲慢、強欲、色欲、憤怒、暴食、嫉妬、怠惰。これに加え涅槃、夢幻、事象、久遠、代償、強制 、の十三人。もう何百年も前の魔女の集会『ガヴン』での意見の食い違いによる、ちょっとした喧嘩のようなものから始まった。
強欲の魔女と事象の魔女の戦争。どちらも、無敵であり簡単には決着はつかない。戦火はこの国にも及びこの有様となった。ちょうど『国を一個潰していた』と、知ったところで戦争は中断された。
事象の魔女はその後どこかへ消えた様だけど強欲はここに残った。
「今度は私たちが相手……暇つぶしになったってことですわ。簡単に砦は陥落。王城に呑気に歩いてきたのです。私は死霊系魔法が使えるのでもちろん抵抗しましたわ。でも、」
王城も陥落。人間では勝てる存在ではなかった。その際にセレーナは一度死んでしまった。
「そしてまた地獄の始まり。強欲の魔女は人間にしては強いからという理由で私をレヴナント『戻りし者』としてこの世に蘇生されたのですわ。代わりに力を貰いましたが、そんなものは要りません。国、親、すべてを奪われたというのにも関わらず、ただ力を与え興味があるから生かされる。こんな事ならば死んでしまった方が楽でしょう」
「……復習とは言え、よく生きる道を選んだな」
――セレーナは幽霊みたいなものか。だから腕を切り落としても血は出ないわけだ。魔力で実態を作っていると言ったところだろうか。
「いつかぶっ殺そうと思っていましたけど、使徒にすら私の魔術が効かないとは……しかも一瞬で私に魔力の乗っていない攻撃は当たらないと理解して、部屋を魔力で満たすなんて……使徒様はお強いですわね。」
「なぁ、魔法ってどうやって使うんだ?」
「どうって、先ほど大きな爆発を発生させてたじゃないですか?」
あれが魔法なの!? 魔力を外に出すことが魔法となるのか? もっとこう魔法陣とかそういうのではないのか?
「……もしかして、あれはただ体内の魔力を集めて解放しただけなのですか!?」
驚いた表情でこちらを見てくる。それほどのことをしたのだろうか。
「純粋な魔力だけであの威力を出せるだなんて……さすがは強欲の使徒様。魔力量がぶっ壊れていますわね。」
アセナも誠と同じタイプである。己の魔力を集め、留めることにより物理ダメージを負わせることが出来る。その上位互換となると膨大すぎる魔力が集められ、行き場を失い膨張し、爆破する。あの規模の爆破となると、膨張しているのにも関わらずさらに過度に魔力を注ぎ、剣が壊れるほどの魔力を無理やり留めすぎたということ。魔力はその人自身から発せられる。魔力量はその人の魔法的性度とも言えるだろう。全く使えない者もいる。
「――ですから、私のように死霊系魔法は使えません。天使の加護によって特殊な魔法は出来るか出来ないかがは決まりますわ。」
あの勇者の話も合わせると転移者は転移した時に天使から加護をもらえる。しかし強欲の魔女によって転移したため天使の加護では無く強欲の使徒として強欲の力を使えるようになった。つまり強欲以外の力は手に入らないという事だ。
情報も簡潔にまとめ終わり、すべてが丸く片付いた。いつの間にか夜になっており月が雲に隠れはじめ、辺りはいっそう暗くなっていく。赤く光る目のエフェクトがよりいっそう輝いて見える。遠くから雨の音が聞こえ始め、静かな夜は終り、王座が雨に濡れ始る。
――自分で言うのもなんだけど、こんなに城を壊さなければよかったな……
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