第14話 無法都市

 ……また同じ技か。それはもう対応でき──


 先ほどの倍の速さ。地面を穿つ音と共に光る刀身が目の前まで迫る。紙一重でかわし、カウンターを繰り出すも浅く終わる。


 ──来た。体が軽くなった。


 また加速する。双剣でも捌くのが限界になり、防戦一方となる。

 残像が見え始め、攻撃は当たらず一方的に攻撃を受けるだけになる。

 ただやられる訳には行かない。この流れをうち切ろうと足掻くが攻撃は当たらない。



 ──最初の何倍の強さだよ!? このままじゃ負けちまう!



 反撃が今は不可能ならば、ここは受け流し、隙ができるまで待つ。

 こう考えるのは当たり前だだがしかし、そんな考えは思いつかなかった。隙の前に自分が倒れるからである。捌くのに全神経を注いでも間を抜いて攻撃が入る。そもそも大半は反応すらできていない。もはや諦めている。


 ──このまま押し切る。


 勝てるそう確信した時であった。突如視界がグラつき倒れこむ。


 フラフラする……さすがに血が足りないか。


 勇者もまた倒れこみ膝をつく。九死に一生を得ると言うやつだろう。逃がしてしまう事より今も尚生きているという実感でいっぱいいっぱいである。


「……アセナここで引くぞ。」


 アセナに担がれ大都を後にする。当初の目的であるアセナの奪還も成功し、結果としては十分だ。


「……女神の加護に勇者、天野 勇成か。めんどくさい内容が入ってきたもんだな」



 ***



「──使徒様〜肉です! 沢山食べるです!」


「……また、つまみ食いしたのか? 前に止めろって言ったよな?ほとんど骨じゃねーかよ。」


 アセナは見るも分かりやすく斜め上を見ながら言い訳をする。


「きっ、聞いてなかったです……!」


 攫われた手口も睡眠薬入りの肉だったと言うのに俺が言ってない訳ないだろ?


「この強欲の使徒様に噓をつくのかね?  あの日ちゃ~んと返事していただろ? これ以上罪を重ねるならアセナには野菜をたっぷり食べさせてあげるよ?」


 野菜は嫌いなようで、簡単に認める。


「うぅ……ごめんなさい……」


 とは、言うが大して観念していない。実にこのやり取りは、もう四回目ぐらいな気がする。


「そういえば、これが落ちていたです!  これ使徒様とアセナが乗ってるです!」


 あらかた予想はついている。何せ強欲の使徒が王都を攻めに来たと言っても過言ではないのだから。新聞にでも載ってるんだろ。


「……悪しき強欲の使徒、マコト。ブラックウルフ族の戦闘狂。以下二名を捕らえたものには金貨三百枚。(生死問わず)──」


 今頃周辺国家にはこれが行き届いてんだろうな。


「もうどこの国にも入れないな……」


 少しアセナが考え何かをひらめいたか、ドヤ顔で解決策を提示する。


「今や無法地帯になってる国があるです! あそこなら人もいますですし、勝手に入っても怒られないです!」


「無法都市と言ったところか……よし、行ってみよう!」

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