強欲の使徒

天然無自覚難聴系主人公

プロローグ

第1話 終わり

 ――ここは……一体どこだ……!? なぜこんなところに? さっきまで信号待ちしてただけなのに……急になんだよ!?


 明らかに信号待ちの景色では無い。見たこともない景色。日本にはでこんな景色を見れる所など知らない。

 見たこともない場所、見たことの無い地面。地面に書かれた字は薄っすらと光を放っている。日本語ではない。英語でもない。理解はできないがなぜか読めている。まったく見たこともない字が読めている。


 天井は高く、荘厳な造りの大きな部屋、どこかこの宮殿のようで、昔っぽい所からローマ辺りといったところか。


 体が少し熱い。今までに無い感覚。体内を血ではない何かがぐるぐると回っているような気がする。


『――の魔女により称号……』


 誰の声だ。何が起こっているんだ? そんなことより、ここ何処だよ!? さっきまで――


 それは唐突に起こった。自分の状況も理解していない中、背中に痛みがかけめぐる。


「ぐァッ!!」


 分からない。分からない。なにが起こっているのか全く分からない。ただ目に見えているのは痛みの原因。胸から剣が突き出してきている 。


 赤い血が大量に流れ出し、自分の今置かれている状況が分かる。


 ――やばい、これ死ぬやつだ。


 服に染み、身体を伝ってどんどん床に広がっていく自分の血をぼんやりと眺める。


 ――熱い、熱い、熱い……


 口から溢れ出る血が赤い水面を大きく揺らす。


 ゆっくりと抜けていく剣から泉のように血が湧き出る。


 否、剣が抜けているのではなかった、段々と血の水面が近づいてくる。ゆっくりと地面に伏していき、血の温かさを知る。


 ――寒い……


「――何をしているの……?」


 聞いたことの無い声がうっすらと聞こえる。


 何かを切断するような鋭い音がし、隣に倒れ込む音がそれぞれから聞こえる。


 まだ薄くぼんやりと見える視界には人が自分と同じ赤い血を広げながらピクリとも動かない他人が見える。


 意味が分からない。なぜこうなっている? なぜこうなった?


「あぁ、どうして? どうしてこんなことに? やっと見つけたのに、やっと私のモノになるのに。」


 ――何を言っているんだこいつは? ……意識がもう……


「また見つけ出して私のモノにするからね――」


 そして命を落とした。



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