最後のスローフォワード

清水らくは

0-1

「ああっ、広いグラウンドだあ」

 視線の先には、練習をするラグビー部員たちがいる。3月27日、晴れ。

 きちんとしたポールが建っているし、タックル練習用のヒットバックもある。

「ちゃんとしてるなあ。犬伏さんは……あ、いた。せんぱーい」

 僕が手を振ると、部員たちがこちらを向いた。呼びかけられた犬伏さんは、しばらく目を細めていた。

「ん……岸谷君?」

「せんぱーい、俺、ラグビー部に入りまーす!」

「だれ?」

 隣の人が犬伏さんに尋ねる。あれは西木さんだ。

「岸谷君だよ。中学で対戦した時、いたよ」

「カルアちゃん以外記憶にない」

「そっか、うちにきたかあ。ラグビー続けるんだなあ」

 犬伏さんは、小さく何回も頷いていた。

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