父ががんになりました。相談する人いないのでエッセイにしました。

杉浦 万葉

第1話 釣りに行きたい…蟹食べ行きたい…


30半ば実家に帰ることにした。(たいした理由はないけど、またいつか書きます。)

子ども部屋おじさんという部類に自分はカテゴライズされるのだろう。


実家に引っ越しも終え、実家暮らしにも慣れてきたある日の朝、

私は居間でぼーっとしていると、父がふとつぶやいたんです。

「蟹食べ行きたい…」

私は冷めた口調で答えました。

「嫌だ。外出したくないんだ。」

すると、父が言いました。

「いいじゃないか。蟹だぞ、蟹。」

少し大きな声になっていた気がしましたが、

私は頑として外出したくありませんでした。

「外出したくないんだって」

と強く口調を強めました。

父は困ったような表情を浮かべました。

※外出したくない理由は、他人の幸せオーラ全開のキラキラした目を見たくないからなんです。自分が惨めに感じるから口に出すわけにはいかず、父もそれを察しているようで、外出の誘いは滅多にありませんでした。

「釣りに行きたい…」

父がまた私につぶやきました。(父は釣りが大好きで、私が幼い頃は海や川に連れて行かれることがよくありました。)私はもう一度強く言いました。

「行くわけないでしょう!そんなとこ!」

父は少し悲しそうな表情を浮かべながら、静かに頷いたのです。







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