第4話

「さて、二階層に到着しましたが、ここで少し罠に対する解説をします!」


:罠?

:い ま さ ら

:全部スピードでぶっ飛ばしてたぞw


 お?

 なんかコメント欄が急に活発になったぞ?

 何故か数分前くらいから同接数がぐんぐん伸び始めた。

 何かやっちまったか?なんて不安になったりもしたが、別に変な発言して炎上、みたいな感じになる様な発言なんてしなかったしな。

 一体なんなのだろうか?


 まあ、そんな事はさておき、配信とRTAに集中しようか。


「このダンジョンでは、いくつか罠のレパートリーがあります!例えば、踏むとモンスターが湧き始めるもの、脚が溶けるもの、魔力制御を妨げるものなどがあります」


:脚が溶ける・・・・・・ヒエッ

:は?なんでそんなヤバい罠があんのにそんなぶっ飛ばしてんの?

:主は頭がおかしい説を推す

:RTA勢ってこんな奴しかおらんのか?


「・・・・・・頭がおかしいとか失礼な。これでも対策はしていますよ。ほら、これ見てください。5万もして高かったんですよ?この対罠脚鎧」


 そう言って見せるは市販の対罠脚鎧。

 5万円もしてかなり高かった。

 普段は罠に嵌ってもぶっ壊すか自己治癒でどうにかしてきたから何を買えばいいのか分からなかったが、今回、RTAって事で本気でタイムを短くするために奮発して対罠脚鎧を買ったのだ。罠への対策が別にある、ってだけで大きくタイムが変わるだろうからね。

 

 防具店の店長にお勧めしてもらったこの対罠脚鎧だが、魔力阻害の術式が組み込まれていて凍結、魔力制御の妨害等を防ぐことが出来るのだそうだ。

 でも、何故だか分からないがあんまり効果があるような気がしなかったりする。

 なんでだろうか?

 

 なんて考えているとコメント欄は凄まじい勢いで流れ始めた。


:それ詐欺品やでw

:普通の対罠脚鎧は最低でも20万はします

:騙されててwww

:それでも罠が現状意味を為していないのは何故?

:存在がバグすぎるw

:いや、草

:やばすぎ


「え?私、騙されてたんですか?」


:化け物は頭も化け物なのかw

:悲報、あなたは騙されています

:今まで騙されてたことに気づかなかったなんて、そんなバカな・・・・・・マジ?

:あ ほ


「マジですか・・・・・・、私、騙されてたんだ・・・・・・なんかイライラしてきたのでダンジョンにぶつけようと思います」


:イライラをぶつけようと思いますwww

:ダンジョンが可哀想

:いいよ、来いよ(死亡確定)

:怒り心頭w

:逆に今まで気づかなかったなんてw

:なんだこの新人(困惑)


「では、そろそろ二層ボス部屋に到着です。この階層のボスは少し厄介です」


 そう、厄介なのだ。

 この階層のボスは“冒険者殺し”なんて呼ばれるくらい凶悪だ。

 何が凶悪なのか、と言うと、弱点部位にしかダメージが通らないのだ。

 所謂幽霊系と呼ばれる物理攻撃、魔法攻撃の一切を無効化してしまう魔物。

 しかしながら、無敵というわけでなく物質的な弱点を持つコアを幽霊系の魔物は必ず持つ。

 なんで”必ず“なんて言えるのかは知らんが、どっかの偉い科学者が証明したらしい。まあ、私には関係のない話だが。


 まあ、そんな幽霊系である今層のボスなのだが、本来弱点であるコアがものすごく硬い。

 本当に弱点部位なのか?って疑問を抱くくらいには硬いのだ。

 

「とりあえずこのボスはめちゃくちゃ硬いです。でも、一応攻略法はあります」


 そして、扉を蹴破り部屋に侵入。

 部屋の中心には蛇同様にゆらゆら蠢くゴーストが居座っていた。

 ゴーストの中には青く光るコアがあった。

  

「あれを砕けば勝ちなのですが、めちゃくちゃ硬い。硬いから無理やり砕くために接近すればあれの発する魔法に迎撃される。なので距離を離してスナイパーライフル型の狙撃魔法で貫くのが正解です。まあ、それでもコアを貫くのは難しいらしいかったりするらしい。ですが、私は魔法が苦手なのでそんな事はできません・・・・・・だから、こうします!!」


 地を蹴り、縮地。

 高速で接近を試みる。

 が、当然ボスもそれを阻もうとして迎撃魔法を展開。

 数多もの光線が曲線を描き、こちら側に迫ってきた。


 多分、そのまま受けたら人間の重要な器官を損ないかねない。

 てか、死ぬ。


「でも・・・・・・関係ない!!!」


 そのまま接近を続け、迫る光線を真っ向から受ける。

 身を貫き、激痛が全身に走る。

 肉が焼ける音がし、血が地面に滴る。


 しかし・・・・・・


「人間は、重要な器官を失えば死ぬって、裏を返せば失わなければただの擦り傷ってことなんだよ!」


 光線のリチャージには数秒の猶予がある。

 僅か数秒。

 多くの人間が生かせない数秒。

 何故ならば準備をしていないから。


 でも、今の私ならばそれは数百秒にも勝る猶予だ。


「──私の勝ちだ」


 懐に潜り込み、巨槌を振り下ろし、一撃を叩き込む。


 メキャリ、と鈍い音がし、コアが粉砕した。


 粉々になり、消失。


「二層攻略完了。タイムは──順調ですね」


:は?

:はあ?

:は?

:は?

:はい?

:なにをしてらっしゃる?


 あ、夢中になってコメ欄読んでなかった。


「何をしたって・・・・・・普通に懐に潜り込んだだけですけど」


:擦り傷w

:新たな名言が出来てしまった

:グロい

:右腕がもげてるんだが

:ヤバい

:いや、草

:うーん、イカれてる!

:これは期待できるw

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