平凡なギルド嬢がRTA配信をする様です〜10年間同じダンジョンに篭っていたから世界記録が余裕な件www〜

絶対一般厳守マン

第一章

第1話

 ──ギルド受付── 



「金が!ない!」


「また?だからアレほどスパチャは控えておけと言ったのに・・・・・・」


「もやし生活乙ー」


 もやし生活、か。

 あの、給料日までの最後の一週間に訪れる地獄の生活。

 世の中の人の多く?が一度は体験するであろう地獄だ。

 特に、新社会人によく見られる現象である。


 今までバイトでせこせこ稼いでやっと8万とかいう世界であったのに、企業に就職する事で急に十何万がぽん、と手渡されることで起きる万能感が引き金となる。


 しかしながら、残念な事にそこから税金、住居費、食費、水光熱費、様々なものが差し引かれて最終的に数万ほどしか手元に残らないのだ。

 ただ、それでも一度覚えてしまった万能感を拭い去ることは中々出来ず、結果限界を超えた娯楽代を使ってしまう。


 その結果、もやし生活となるわけだ。

 

「くッ!税金にかける金があればもっと推しに投じれるのに・・・・・・そうだ!脱税しよう!」


「残念、私たちギルド嬢は公務員だから源泉徴収で先回りされてまーす」


 ああ、そうだ、そうだった、私、陰見理音カゲミリネは公務員だった。

 脱税しようにも脱税は出来ない様に措置されてしまっている。


「これが、資本主義の闇か・・・・・・」


「・・・・・・脱税する前に推しにスパチャ投げるのやめれば良い話じゃん」


「理音はアホだから無視したほうがいいよ」


 酷い・・・・・・同僚達からこんな扱いなんて、私は泣いてしまいそうだよ。

 好きな推しに金を貢ぐのは呼吸するのと同じなのに・・・・・・。

 

「人間、呼吸をしなければ生きていけないのだよ」


「で?」


「つまりは、スパチャと課金は私の呼吸」


「はあー、私だったらそのお金で服買ったり化粧買ったりするのに、てか、そうしてる。そんなだから一生彼氏できないんだよ?」


 クッ!こいつ、痛いところを・・・・・・。

 彼氏いない歴&モテない歴=年齢の私にとってはそこそこ傷つく言葉だ。

 その言葉は私に効く・・・・・・。


「・・・・・・そんなに金が欲しいなら冒険者始めれば?」


 冒険者、か。

 ダンジョンに潜り魔石と魔物素材を採取し、換金する事で生計を立てるという仕事だ。

 おおかたゲームにおける認識と同じような物で、S級レベルになれば億を稼ぐなど余裕でできるようなロマンのある仕事だ。

 しかしながら、多くの冒険者はそんなモノになれる訳もなく、せいぜいB級で止まる。そして時期によって年収300万から500万ほどを行ったり来たりする。

 で、そんなダンジョン冒険者相手に換金対応したり事務処理したりするのが私たちギルド嬢だ。

 こちらは冒険者と違い、ダンジョンは国が運営しているため公務員扱いとなるのだ。安定していて、決して解雇されない存在。

 ただ、まあ、残念なことにまだ私は新入だから給料はそんな高くないけど。

 ここだけの秘密だけどおおよそ年収は200万程。

 大体の新入社員とかとそこまで変わらない収入である。


 しかしながら、ここから水光熱費やら諸々引かれて自由に使える金は殆ど残らないわけで、こっそり副業していたりする。

 そう、ダンジョン冒険者だ。

 まあギルド嬢は副業禁止だからこっそりやってるけど。

 大変だったんだからね?住民税を弄るの。

 少年少女諸君には分からない話だが、きっといつか判る様になる・・・・・・。


 と、そんな感じで推しに投じる金はなんとか捻り出していたりする。

 ただ、それでも好きにスパチャ、あるいはゲーム課金等を出来るか?と言われるとその答えはNOだ。

 何故ならば、ダンジョン冒険者ってあんまり儲からないからである。

 今まで趣味としてやってはきていたが、この前初めて階級資格を取ってB級となったが、装備代などで六割ほど利益が溶ける。

 まあ、ポーションがないといざって時に魔物に食い殺されるなんて事になってしまうからそこは絶対に削れない。

 って訳でそこまで自由に金が使えるって訳じゃない。

 それに、あくまでも副業だから1日に数時間ほどしかダンジョンに潜れないからね。


 とまあ、そんな感じで副業していたりするのだが、当然同僚には内緒にしている。


「フクギョウハダメダヨー」


 完璧なポーカーフェースで副業を否定。

 うん、これなら絶対にバレない。


「・・・・・・バレてるからね?あんたが冒険者やってんの」


「ギクリ」


「ほら、そう言うところ」


「分かりやすすぎるー」


 バレてしまった・・・・・・。

 これ、不味い?


「大丈夫だよ、言わないから」


「良かったー」


「まあ、そんなに金が欲しいってんなら配信者になれば?」


 配信者とは、ダンジョン攻略を配信する人たちの事だ。

 彼らはトーク力、攻略の腕で視聴者を魅了する。

 で、投げ銭を貰ったり広告で金を得る。

 まあ、売れなきゃ徹底的に売れないんだけどね。

 こちらも冒険者同様ロマンのある仕事だ。


「配信者、か」


「上手くいけばこんなギルド嬢なんかより全然儲けられるよ?」


「よし!やってみる!」


 人間、何かを得るには何かを始めなければならない。

 普遍にして絶対の真理、なんちゃって。

 まあ、実際問題そうだ。

 何か、行動しなければチャンスなんて訪れない。

 

「ま、売れる訳ないけど取り敢えずやってみるわ」


「がんばれー」


 そんな訳でなんかダンジョン配信をする事になった。

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