第10話 居場所探し
最近
地元の喫茶店が特集された本を買った。
カフェの雰囲気が好きで
数年前…
仕事を辞めたばかりの一時期
カフェ巡りにハマったことがある。
そんなこともあったから
楽しみに本を開いた。
本の中で
喫茶店の店主の笑顔を見た瞬間
なんか、嫌な気持ちになった。
どこの喫茶店がいいかな。
るんるん🎵
ってしてたのに
いつのまにか
店主の顔のない喫茶店を
選ぼうとしていた。
喫茶店のこだわりを
本の中から感じるたびに
へえ、すごいな。
行ってみたい。
とはならなくて。
あんなに楽しかった
数年前のカフェ巡りは
もしかしたら
土足で聖地に
踏み込んでたんじゃないかと
思ったりもした。
なーんにも知らなかったんだ。
行きたいと思うその
相手のことを。
ずっと、私は歓迎されてる
としか、思わなかった。
なんて、おめでたかったんだろう。
お店というものは
お客が選ぶもので
お店が
お客を選ぶものではない。
そう、思ってた。
思いたかった。
でも、ほんとは気付いてたし。
常連さんがいて
その子どももまた、常連になってて
お店の人がそういう人には
声をかける。
私には、注文しか取らないのに。
それでもよかった。
その頃。
人の想いなんていらなくて
ただ
お金出したら
コーヒーと場所が提供された。
喫茶店は…
お店っていうのはどこでも
人がやってて
店主や
そこで働いてる人や
その店を気に入った
常連さんたちで
世界観が確立されて
新参者は
その世界観に
馴染めないなら
歓迎されるはずもなくて
なのに
「店の人感じ悪かったね」
なんて、思ったりして
そういうのも
そういう態度も
わざとかもしれない
って、思った。
もう2度と来ないように
無言の…。
なんていうか…
店というよりは
人そのものなのかもな。
「お金もらっても
来てほしくない客も
いるんですよね。」
なんて、もちろん
その本には、書いてないけど
プライドと自信と
こだわり抜いたそのお店は
店主にとっては、きっと宝物で
本の中での笑顔のように
誰でもウェルカム
とは、本心、思ってないだろうに
と思った瞬間
その本の中の笑顔が
繕った笑顔に見えて
嫌な気持ちになった。
あの頃
何にも知らなかったんだ。
私がお店を選んだら
お店も私を選んでくれると
思ってた。
だから
素敵な…素敵すぎる
ここで
私が歓迎されることを
来たことを感謝されることを
期待して、巡ってた。
結局
落ち着いたのは
チェーン店で
そのうち、カフェ巡りは
自然におさまった。
あの頃のカフェ巡りに対する
異様なときめき。
どんなことでもそうだけど
あの頃のときめき
というのは、その時だけの宝物。
思い返して
同じことをしようとしても
もう、それは
一度読み終わった
推理小説の謎解きを
もう一度、繰り返すようなもの。
どうしても
退屈さ が付きまとう。
もう、解決したのだと。
私の中でもう、解決してたんだ。
あの時の欠けたこころは
丸く取り戻って
居場所は、今、ここにある。
喫茶店の本を閉じた。
過去のときめきを辿る
素敵なひととき。
今の私にはもういらないもの。
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