第3項 失意のゴミカス

 あれから10年が経った。


 そして、わかってきた事がある。

 本当のゴミカスは俺様だったようだ。


 あれから何十人もメイドが変わったんだがな。

 誰1人として、俺の気持ちを理解しようとしない。


 いつになっても俺の食の好みを覚えないし、

 俺が咎めると、怯えた子犬のような目で俺をみる。


 そして、ばかのひとつ覚えのように

 決まってそういう日は夜伽にくる。


 何なんだ、あいつら。

 メイは一度たりとも、そんなことをしなかったぞ。


 あいつはいつも、冷ややかで俺様を憐れむような目をしていた。


 でも、この10年でわかった事がある。

 俺は、俺の矮小な内面を見透かすような、メイの視線が怖かったのだ。


 それで、壊してしまいたくなった。


 本当は唯一の理解者だったかもしれないのにな。


 本当に愚かな事だ。

 愚かすぎて泣けてくる。

 今更、メイに会いたいだなんてな。


 都合がいいにも程があるだろう。

 ああ、寝付けない。夜風に当たろうか。


 憂さ晴らしに領民に八つ当たりするか。


 その晩、俺様は当てもなく彷徨った。

 会いたい人に会えない、この気持ち。

 そして、その原因が自分だという許し難い事実。


 やりきれない思いになったのだ。


 馬車道を歩いていると、黒馬にひかれた漆黒の馬車がすごい勢いで走ってくる。


 ああ、もうどうにでもしてくれ。

 俺の人生を終わらせてほしい。


 そして、俺様は、馬車に轢かれて死んだ。

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