もし、もたない僕が生きれるなら

佐藤恩

~小学生編

なぜ

僕は、いつも一人だった。それこそ、家に帰っても学校に行っても。

どこにいても僕は、一人だった。


○○○


今思えば、生まれた時から感じていた違和感があった。

それは、人に比べて心が成熟していることに。


小学校では、母親の求める「いい子」を演じ、

先生や同級生からも頼られるような、そんな存在だった。

授業参観があった時なんて、あからさまに僕ばっかり当ててきて、授業をスムーズにしてきたことだって数える指の方が足りない。そうやって、僕は.


「いい子だねぇ。うちの子も見習ってほしいわぁ」 と言われる世辞に2年生から向き合ってきた。その中には、4年だったか5年だったか、上級生のお母さんもいて複雑な気持ちになったのは言うまでもない。


そうやって、演じた小学校時代の中で僕には兄妹ができた。

弟と妹が一人ずつ。二人とも可愛かったし大好きだった。

学校から帰っては、一緒に遊んだりご飯を食べさせたり。

兄妹仲はとても良かった方だと思う。


母親と兄妹とは何一つ問題のない付き合いをしてきた僕。

ただ、父親とだけは仲が良くなかった。それは水と油のような。

それでいて、水は若干の油を含んでいることを自覚しながらもそれに嫌悪して。


に自覚したのは、物心つくかつかないか曖昧な時期だったのを覚えている

祖母が遊びに来た時に、レモンを切ろうと包丁を握り、誤って指を切ってしまった。

滴る血を見ながら。僕の手当てをする大人たちを見ながら。僕はただ怖かった。

切ったことが怖かったんじゃない。心配してくれる大人たちにも怖かったんじゃない


僕の身体を流れる血を、魂の一部を、ただと思ってしまった。

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