第100話 南北の歴史

 三千年前。

 天変地異によって世界が二分される。

 北のジークラッド、南のジーバードとなる。

 

 天変地異の際。

 世界の人々は北のジークラッドに移動。

 だが、人族ヒュームだけが南のジーバードへ逃げる。

 ヒュームは異なる世界を作っていくことになる。

 これを『ヒュームの箱舟事件』と呼ぶ。

  

 この事件と同時期に、ファイナの洗礼が発動する。

 発動者はファン。イヴァン。ナディアの三名。

 白のベールがジークラッド大陸全体を包み込み、ジークラッド大陸は閉ざされた世界になる。

 洗礼を施した理由はいくつかあるが、主な理由は世界の隔絶である。



 二千年前。

 南の世界。

 ジーバード大陸は四分割される。

 とある英雄と、とある神鳥の力により、大陸は四分割された。

 この当時のジーバードの人々は、モンスター災害を受けていたのである。

 モンスターウエーブ。モンスターストーム。モンスタークエイク。モンスターサンド。

 四種の災害はジーバードの人々を苦しめていたが、そんな中でも人々は争いを続けていた。

 だが、この四分割のおかげで、逆に平和となる。

 各大陸がそれぞれ協力する体制を整えたからだ。

 そしてこの頃より、冒険者ギルドは誕生する。

 ここより二百年程でギルドのシステムは完成されて、三大クエストが誕生する。

 


 千四百年前。

 飛空艇三機の完成。

 四大陸を回る二つの飛空艇と、冒険者ギルドの飛空艇である。

 ジョルバに国が出来る。

 テレスシア王国の建国。

 英雄『大王』の初観測。



 四百年前。

 ジョー大陸に国が出来る。

 テレミア王国の建国。

 英雄『魔王』の初観測。

 大王と魔王の激化する戦いは、舞台がジョー大陸に移る。

 最終決戦で大王が勝利をおさめる。

 だが、その倒したはずの魔王の力はジョルバ大陸の一部の人間に残ってしまう。

 影響下に置かれたテレスシア王国がジョー大陸に戦争を仕掛ける。

 なので、これに対抗するために、ジョー大陸に国家が出来たのだ。

 魔王勢力を討伐したはいいが、これ以来、二か国は二百年間の緊張状態を維持し戦いを続けてしまう。



 百五十年前。

 魔王の影響は一代で消えていたはずなのに、習慣のようになっていた戦争。

 その長きに渡る無駄な戦争に終止符が打たれる。

 停戦協定が結ばれた。

 両国はここから歩み寄りを始める。


 

 これがジーバードの歴史である。

 これは歴史図書館にもない歴史だ。

 それは、英雄職『魔王』を秘密にしなくてはいけなかったからである。


 そして。北の歴史は・・・。


 ジークラッド大陸は世界の北にある大陸。

 大地の約三分の一が不毛の大地で氷に覆われてしまっている特殊な大陸である。

 白いベールに包まれて閉ざされた世界を構築しているジークラッドは、カイロバテスの南側のジーバード大陸の人間たちにとっては未知のものである。

 歴史も。人も。物も、何もかもが分からない。

 未知の大陸であるのだ。


 ジークラッド大陸には、種族がある。

 人族ヒューム

 魔人族

 亜人族(魚人、鬼人、竜人等々)

 獣人族(各種族)

 妖精族(エルフ、ドワーフ、カーベント)

 が大まかな五種族である。

 このほかにも、事細かく部族がいるがそれはここで説明すると膨大になるので省略しよう。

 

 三千年前。

 ジーバード大陸に移り住んだヒュームらは、妖精族の事を、エルフ族とドワーフ族の二種に分けて考えていた。

 それは何故かというと、ヒュームとカーベント族は、関わり合いがほぼなかったからである。

 説明を加えると、カーベント族の個体数は極僅かであり、その存在を知る者はごく一部であったからしょうがない事である。

 南へ移動したヒュームたちでは、彼らの存在を知りえなかったのだ。



 ジークラッドの歴史はカイロバテス大陸から続く戦いの歴史を継承している。

 大陸が一つだった時に起きていた戦争『五種族戦争』

 それを継承した『南北魔大戦』と呼ばれる戦争が、今なお続いている。

 ただし現在は停戦中ではある。


 事の始まりは、大陸の残りの資源を巡る争い。

 そして今の争いの理由は、ファイナの洗礼である。

 支配域をジーバード大陸にまで伸ばしたい北の解放軍。

 二つの大陸の平和を守ろうとしている南の連合軍。

 この両者の争いは、一次と二次を乗り越えて、現在は第三次南北魔大戦の真っ只中。

 激化した争いに終止符を打ったのは、不条理な停戦協定。

 北の解放軍が南の連合軍に事実上の勝利宣言をしてから70年が経過した世界である。


 ジークラッドでは少数となった上に力の弱いヒューム。 

 好戦的な魔人族。

 とにかく強き者と決闘を好む亜人族。

 自由気ままに生きていたい獣人族。

 自然との調和を望む妖精族。


 五種族の考えはそれぞれ異なる。

 それぞれの思いは入り乱れ、南北魔大戦という長い戦争は、大陸の至る所で行われていた。

 カイロバテスの戦いの歴史の中心には常に南北魔大戦があったのだった。


 だが、この愚かな戦闘の歴史に転機が訪れることになる。

 三千年にも及ぶ戦いの歴史に、風穴を開ける人物が現れたのだ。

 それは空から降って来た無職の使者。


 その名を・・・・。

 ルルロア。

 英雄の希望の星 『ルルロア』 である。


 


 

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