男爵令嬢は探偵☆

@satomi1112

本文

私は男爵令嬢カミール=フェイスリバー。まぁ、貴族令嬢の底辺だけど、裏の職業は探偵。


こっちでかなり稼がせてもらっている。


領地の収入なんて目じゃない。領民を養えるくらい儲けてる。


最近の依頼は浮気調査(貴族だもの妾だとか、女性を囲うとかは多いけど、最近は淑女教育を受けたはずの奥様の浮気調査が多かった。)とか、正直ダル…とか思う依頼が多かったけど、今度はなかなか面白そうな依頼が入った。




『潜入調査』面白そうでしょう?私はこの年で学園に入学。

潜入し、皇太子の動向を逐一陛下に報告。内容によって給金が割り増しされたりする。

前払いでもらった金貨があるけど、さすが国は太っ腹!

あと、私はカミュ=麻木という偽名とどこか東方の国の貴族(確か爵位は侯爵)になりすまし、学園に入学する。


陛下が言うには、『側近の方が今年殿下の元に聖女なるものが現れます。そのものは学園の秩序を乱し、様々な男を手玉にとり、殿下の婚約者さえも国外に追放しようとするのです』

というものだった。

この時点で、『聖女じゃないじゃん』と思ったのは黙っておこう。お金のためだ。うちは貧乏男爵家。

その『聖女』というものは元・平民で学園入学時には男爵令嬢になっているらしい。



いろいろ情報貰ったし、私は私で頑張ろう!



学園の入学式、私は名前を呼ばれたが気が付かなかった。カミュ=麻木。慣れない。慣れればすぐ反応出来るんだろうか?


本当に『聖女』なるものも入学してきた。学問とかも大事かもしれないけど、そこらを浄化したりするのが『聖女』の役割では?と私は勝手に思う。


でもどうしてだろう?『聖女』は殿下の婚約者を悪役に仕立て上げようとしてるみたいだなぁ。これも陛下に奏上しよう。メモメモ。その上で殿下に取り入ろうとしている。


えーと、王妃教育も碌に受けていない自称『聖女』が殿下の婚約者を悪役令嬢として貶めて、そのうえで殿下に取り入り、自分が殿下の婚約者になろうという事?


いやいや、無理でしょう?

何才から殿下の婚約者ってのは王妃教育のために勉強してると思ってるの?

それをぽっと出の男爵令嬢が成り代わるってのはどう考えても無理!


無理だけど、そういう事なんだろう。他の男まで手を出してるのは趣味?悪趣味~。婚約者がいらしてる方もいらっしゃるのに。


この事を陛下に報告しよう。報酬、増えるといいな。


陛下はお怒りだった。自分の息子の愚行と『聖女』を召喚した教会にだ。


しかし、『聖女』による断罪ショーは陛下が出張でいない時に行われた。陛下がいたら、止められると思ったんでしょうね。止められるでしょうけど。


「おまえとの婚約は今日をもって破棄し、今後私はこの『聖女』を婚約者とする」


あーあ、宣言しちゃったよ。減俸かも…。

破棄はマズいよ~。一生懸命、殿下のために王妃教育受けてきた婚約者に向かってそれは酷い。しかも、色々冤罪ふっかけるし。

タスケテ~、陛下~!!


「そこまでだ。お前は何を考えてるんだ?まぁ、そのことについては城の私の執務室でじっくりと話を聞こう。今日の宣言はなかったことにしてくれ。いいね」

陛下は笑顔だけど、圧力を感じる。

タスケテって確かに呼んだけどさ。まさかの登場だよ…。



何故だろう?陛下の執務室には私も呼ばれた。

「彼女には学園の内部調査をしてもらっていた。はぁ、そこなる『聖女』殿がかなりの秩序を乱したようだな?」


「お言葉ですが、違います。殿方の方からお声がかかったのです」


「ほう、自覚があるようだな。秩序を乱したと言っただけで、『聖女』殿の交友関係については言及していなかったが?」

さすが国王です。一枚も二枚も上手です。国王たるものこうでないと!


「何故、『聖女』殿の交友関係がおかしくなったのだ?婚約者のいる男性まで『聖女』殿の取り巻きのように動いていたそうだな?」

そうなのよ~。解(げ)せないわ。


「ですから、殿方の方からお声がっ!!」

必死だなぁ。でも、取り巻いてたのってほぼほぼイケメンなのよね。若しくは強力な権力を持つ殿方。その他の殿方はいなかったのよ。


「まるで選り好みをしたかのように、イケメンとかが揃っていたとか?殿方が無作為に集まってきたとは思えないのだが?」


「っ・・・!」

そうよねぇ。どういう仕組みかしら?まさか…禁忌魔法である魅了を使った?


「王族だけが使える拷問のような自白させる魔法もあるのだが?」

王族こわー。絶対、敵に回したくない。


「…魅了魔法を使いました。…でも!陛下は魅了にかからないじゃないですか!」


「俺?そういうのかからないような魔道具身に着けてるんだよね。迂闊だった。王子も身に着けているべきだった。第2王子からは身に着けさせよう」

陛下は無事ってそんなカラクリだったのかぁ。陛下も魅了魔法でどうにかしようとしてたのか…恐ろしい小娘だな。


「で、その魅了魔法なんだが?誰が『聖女』殿に授けたんだ?」


「父が「コレがあれば王家に取り入る事もできる!」と私に…」

元気なくなってるなぁ。まぁ、魅了魔法使って国家転覆を謀った罪は重い。


「では国家転覆罪で男爵家は取り潰し、男爵は捕まえて魅了魔法の出所を探る。『聖女』殿も地下牢に入ってもらう」



こうして私の潜入調査生活は終わった。


「こら、今度は魅了魔法の出所を探ってもらう。前金は君の家の机に置いた」

なんて無防備な!!

そんなとこに大金を置いたら、数少ない使用人が持っていくわよ~!!


案の定、国王の心ばかりの前金の殆どを使用人に盗られた。チクショー!!


実際に働くのは私なのに、酷いなぁ。どうせ男爵家だもん。使用人は入れ替えできないとふんでるんでしょう?…その通りなんだけどさぁ。貧乏男爵家って辛いなぁ。



で、調査団に私が加わり調査が始まった。今回は偽名とかない。

『聖女』の父親が自白した(?)魅了魔法を手に入れた場所へと調査団は行く事となった。

郊外の森の中なので、護衛騎士も多く同行することとなった。

その中には『聖女』の餌食となっていた方のお父様もいらっしゃるようで、大変ご立腹の様子。


「『聖女』の父親の男爵の話によると、森の中の沼から魅了魔法が湧いてきたらしい。どんな沼なんだか…。全く、ため息が止まらない案件だよ。早急にこの件を終わらせる」

との陛下のお言葉。


沼から魅了魔法が湧いて出た?意味が分からない。


しかし、身をもって体験した。


その沼からは今は禁忌とされる魔法が湧き出るようだ。私には透明化の魔法がかけられた。誰がそんなことをしたのか?

私の声は聞こえるようだが、姿は全く見えないようだ。

危険なので、禁忌魔法として封印したはずが、この沼から湧いている。


早急にこの沼を埋めるのだ。


その場にいた。全員で沼を埋めた。

私の姿は認識されない。陛下は見えるようだ。それも不思議だけど、あんまり考えないでおこう。世の中知らない方が幸せな事もある。


さて、誰がカミュール嬢を透明化させたのかという事だが…。

ここに来るにあたって、全員に署名をさせた。透明化をして逃げおおせると思ったら大間違えだ。点呼をするので、ここに来るように。


一人一人点呼され、陛下のもとにやって来た。

おかしな人は…一人いた。

私を透明化する利点。全ての罪を私に被せる。男爵令嬢だし?

殿下の婚約者の公爵令嬢の叔父。

殿下がうまいこと『聖女』とくっついた後なら、公爵家の当主にはなれないが、『聖女』には‘貸し’を作り、権力を作ることができると考えたのだろう。浅はかだ。

それで、私を透明化させるかねぇ?迷惑なんですけど?これ、どうやったら元に戻るの?


公爵叔父によると、1日で元に戻るらしい。


あんたと違って、私は…うちはビンボーなのよ!タイムイズマネー!


ああ、きっとつまらない浮気調査とかの依頼あるだろうに。


「透明化させてカミール嬢に迷惑をかけたんだ。その分は彼女に謝れ!」

陛下はそういうけど、謝って済むなら騎士とかいらないのよ!金よ金!

金銭で謝罪しなさいよ!


陛下は報奨金をくれた。これよ!

さぁ、金銭での謝罪を要求するわ!


「陛下の報奨金と同額をカミール嬢に謝罪として与える」

与える?なぜ上から目線?腹立たしい。本当に謝罪する気あるの?


「カミール嬢に受け取って貰いたい」

そうよ、正しくはそうよ。


「陛下と同額?陛下から特に被害を受けたわけではないわ。その陛下と同額ですの?」

そうよ、あなたは私に被害を与えたのよ。無害な陛下とは違うわ?


「陛下の報奨金の1.2倍の金額をあなたに受け取って貰いたい」

私は前金盗られたり、散々なのよね。


「あなたには加えて、1キロの純金塊を要求します。これで手打ちにしましょう?公爵家だもの安いものでしょう?」

私はこのようにして手打ちにした。



その後、私は探偵業を復活させた。

はぁ、せこいけどこれが一番金になるのよねー。

だいたい、自分は浮気だのなんだのしておいて、奥様の浮気調査とか「馬鹿じゃないの?」とか思っちゃう。

奥様の浮気調査がてらにわかっちゃうのよねー。浮気の理由。「旦那が浮気するから」だもん。

そりゃあ、自分は浮気しといて奥様はダメなんかい!ってつっこみもいれたくなる。


はぁ~平和だな~。油断すると透明化する体質になったけど、探偵的にOKだし?ま、いいや。って感じ。








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