第5話 あれって?
「哲!何ビビってん?そんな鼻くそも倒せんのかい!」
「何やてぇ!おまはんこそ、たった一人に金玉ビビり上がってのとちゃうんかい?!」
「なに言うてけつかんねんな!哲、だいたいおまはん、わいの子分の分際で偉そうやねん。」
「えっ、なんかいうた?誰がビビりの子分やねん。」
北斗と哲は、手こずっていたチンピラヤクザをあっという間に蹴散らし、二人で喧嘩を始めたのだった。
さて、この二人、何故このように暇なのか?
地球が消え、新たな星に変わり、磁気嵐が吹き荒れても、何事もなかったように喧嘩をし続けている。
この物語に必要なものは鈍感でのんきな人間たちの幸せではないだろうかと思ったからであり、地球人の象徴が彼らではないかと考えたからである。
「現在、冥王星が宇宙空間を浮遊中。準惑星から惑星へと再成長しています。その大きさは、すでに木星を超えました。」
「この宇宙は、どうなってしまうんだ。太陽が再生し、安心したと思ったら、今度は、惑星周期にある恒星が肥大化し、惑星へと変貌していく。第2の地球である海円星がもし、その影に入り、太陽の光が届かない星に変われば我々は、凍りついた氷像に変わってしまう。惑星移動も起こっている今、この星を捨て、第3の地球探しを早急にしなければ我々が絶滅してしまう。嘗ての地球にいた恐竜たちのように・・・」
アーステクノロジー開発研究所所長、メイアン・ウイリアムズは海円星を危惧しながらも、何故自分だけが、地球にいた頃と同じ環境にいるのか疑問に思っていた。
「サック!直ぐにこの宇宙の果てに開いたブラックホールに量子赤外線コンタクト望遠鏡を向けろ。探すんだ!」
「所長、探すって何を?」
「決まってるだろう!第3の地球だ!」
こうして、アーステクノロジー開発研究所の二人は、海円星の代わりとなる星の探索を始めた。
「所長、こうやって宇宙じゃない宇宙を見ると不思議ですね。」
「何が不思議なんだ。」
「だって、何処まで行っても宇宙の次は宇宙で、その周囲は暗闇に光る星々。なにかこう、異世界的な見たこともない世界が広がって・・・みたいなものは無いんですかねぇ。」
「お前は馬鹿だろう。それを目にしているのは人間だってことを忘れているぞ。」
「えっ?」
「人間の視覚認知は、限られた色の変換だ。地球にあった桜の花も、虫や、動物たちにとっては人間のそれと同じではない。そんな事、小学校レベルでも知る知識だ。お前、履歴書誤魔化したな。」
「いえ・・・私、本願寺サックは、れっきとした某有名六大学のエリートでありますゆえ。博士、そんなことよりさっきからもう一つの宇宙の中に、強い赤色光を放つ星が確認できるのですが・・・」
「何!見せろ!」
「おおっ、あの星は、あの宇宙で一番大きい星のようだ。待てよ、赤色光が見えるということは・・・そこに光源があるということ。ということは、もしや、この宇宙と同じ、太陽系のような銀河も存在している可能性がある。サック、アレを持ってこい!」
「あれ?あれって?」
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