「雪国」川端康成

 露骨にエロを扱う場面が出てこないのに、妖艶な物語でした。生き生きとした女性が川を上っていく鯉のようにもがきながら、一心にこの世を味わっている感じがしました。


 主人公の見ている景色がそのまま私の瞳にも映っているようで、手足まで冷たくなるような感覚さえありました。ほっぺたが寒気になでられて、鼻が赤くなるみたいな温度と風があります。


 私は南国出身なので、雪というものが珍しくも恐ろしく、屋根が潰れる、公共機関が止まるとはいったいどういうことだろうかと、まだピンとこないのです。今は東京に住んでいるのですが……。


 そのような雪の知識に疎い私にも、場面をありありと見せてくる描写がここにあるのです。どんなに計算されつくした、緻密な筆のなせる魔法でしょうか。

 自分の知識を読み手に伝えるためには、状況をしっかりと伝えながら、かつ過剰と思わせないバランス感覚が必要なのでしょうね。私はそれを、執筆を通して習得していきたいです!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る