第16話「最強達の激闘」

「思ったより試合が早く終わりましたね……ではチームを変えて試合をしましょう。」


体育の教師の指示によって次は別のチームによる試合が行われる事になった。

次の対戦カードは……。


「次の相手は……2年の多島先輩がいるBチームか……。」


「強敵ですね……。」


「エリナちゃん行けそう?」


「実力は互角ぐらいだと思われます。ですが相手は多島先輩だけじゃなく、エルザもいます……勝利を確実な物にする為には……。」


映太、エリナのいるAチームの次の対戦相手は、陽彩のいるBチームに決まった。

流石のエリナでも苦戦を強いられるのは目に見えており、彼女は自分と映太の2人だけの力で相手に立ち向かうのではなく、「彼」への協力を申し出る事に決め、彼の元へと歩んでいく。


「……私と映太さんだけでは多島先輩を攻略するのは難しいです……どうか力を貸してください!庵乃丞玖門先輩!」


「……あぁ。あの男を倒す為には俺の力が必要だ。」


エリナの申し出に3年A組の彼、庵乃丞玖門(あんのじょうくもん)は首を縦に振った。

彼はこの学校の不良グループ、真理凸津央會(まりとっつぉかい)の総長であり、この街最強の不良だ……。



「選手の皆さんはに出て挨拶を!」


コートに並び立つAチームとBチームは試合前にコートの中央で挨拶と握手を交わす。


「お前相手には手加減してやるよ、清司。(ニコッ)」


「お、お手柔らかに……。」


「容赦しませんヨ!エリナ!」


「私もそのつもりです。貴方が私達の中で一番の頑張り屋さんなのは承知してますから。」


この時だけは普段は仲の良い者同士でもライバル関係となり、スポーツマンシップに則り全力で戦う事を強いられる。

だがそれを抜きにしても、多島陽彩と庵乃丞玖門は……。


「よろしくお願いします!庵乃条先輩!」


「……暑苦しい熱血男め。」


握手を求めて手を伸ばす陽彩だったが、玖門は一瞬だけ手を掴んだ後すぐに手を放す。

言うなれば、陽彩は皆から支持されている「日向の人気者」であり、玖門は不良グループを統率する「影の支配者」……両者は両極端に位置している。


「庵乃丞先輩、不良なのにドッヂボール大会に出るなんて……楽しみにしてたんですか!?俺もめっちゃ楽しみでしたよ!!もう昨日の夜は眠れなくて__」


「黙れ。」


「酷い!!」


陽彩と玖門はそんなやり取りをした後互いのコートに位置取り、映太達も臨戦態勢に入る。


「それでは……試合開始!」


審判の合図によって試合が始まり、先程ジャンケンでBチームに勝ったAチームのコートにボールが投げ込まれる__



「……暇だなぁ。」


清司は外野でつっ立ったまま、ただただ試合の様子を見せられるだけだった、映太、エリナ、玖門、陽彩、エルザだけが残ったコート内の死闘を……。


「はぁっ!!」


「とうっ!!」


「……っ!!」


「それっ!!」


「ハイッ!!」


エリナが投げる豪速球を陽彩は踏ん張って受け止め、陽彩が投げた殺人的なスピードのボールを玖門は片手で受け止め、その手から放たれたボールをエルザは受け止め即座にワンバウンドシュートを放ち、標的となった映太は頭突きでそれを弾き返して陽彩を狙い(以下略)……


とにかくその試合に、清司のレベルの選手が介入する余地など一切無く、超人達によって繰り広げられる本気のドッヂボールを、外野の選手達は傍観する他なかった……。


「っ……!!」


「こい!!デース!!」


「スーパー映太シュートォォォ!!」


エルザに狙いを定めて放たれる豪速球は、肩部に飛んでくるだろうというエルザの予想を外し、ボールは急に落下してエルザの脚部に直撃する。

映太は変化球の使い手だったのだ。


バシュッ!


「よしっ!!」


「悔しいデース!!」



「うおお!!俺も今凄い必殺技の名前を思いついたぞ!!喰らえ庵乃丞先輩!!スーパーウルトラミラクルファンタスティックアルティメット__」


「早くしろ。」


「はいぃーっ!!」


陽彩は玖門をターゲットとして必殺の一球を繰り出す。

先程までの球よりも遥かに威力の高い一球だったが、玖門は両手をクロスして、その両手にボールをぶつけさせる。

ボールは玖門の両手に直撃しても勢いを落とすこと無く、彼は両足で強く踏ん張ってなんとかボールを止めようとする。

その果てに玖門は陽彩の一球を凌ぐ事ができるのか、それとも……


「……がぁっ!!」


「何っ!?」


玖門は勢いよく両手を振り上げ、受け止めていたボールを前方に弾き飛ばす。

自身もボールが当たった事により失格となる禁じ手だが、玖門の両手分の力で弾き飛ばされたボールは光よりも早く陽彩の元に到達し、彼に直撃した……かに思われたが……


「あっ!!」


「危ない!!」


次の瞬間、映太はエリナを庇ってボールが腹部に当たって退場となった。

陽彩は確かにボールが直撃した……ただし顔面にである。

さらに陽彩はボールが顔面に直撃した刹那、先程の映太の顔面シュートを思い出しそれをAチームにお返ししてみせた。

そのボールはエリナに向かって飛んでいったが、映太が身を呈してエリナを守ったのだ。


「これで……。」


「あぁ……。」


「陽彩先輩VSエリナちゃん……か。」


Aチームのコートに残ったエリナとBチームのコートに残った陽彩、2人の戦いが始まる……。

映太は外野からエリナの事を密かに応援した。


「私は……Aチームは……勝ちます!!」


「その意気だAチームの子!!俺も全力で相手をしよう!!」


「頑張れ……エリナちゃん……!!」




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