みんなで終焉われば怖くない! あ、でも努力はします!
桜盛鉄理/クロモリ440
第1話
騒がしい教室を出て、
「さてと、やろうか」
「オッケー、私からいく?」
そうして
「…じゃあね、ホメオスタシス」
「恒常性。じゃあ、スクナヒコナノミコト」
「一寸法師の原型になった日本の神様よ。神官の娘なめんな。……トライセラトップス」
「3本角の恐竜。あるいはそれをバンド名にしたスリピースバンド。ぼくも魔導書ばかり読んでるわけじゃないんだよ。……スリップストリーム」
「まえの車を風よけにするレースの走法よ」
「もうすこし詳しく」
「うっ! 確かスピードを維持する他に燃費向上にも効果がある、はず?」
「正解」
「もう! そこは流してよ」
「駄目駄目、ルールだからね。次は?」
「『ム』ね。……ムソルグスキー」
「ロシアの作曲家で代表曲は『はげ山の一夜』。じゃあ……キンバリー・バウアー」
「『24』の主人公の娘でトラブルメーカー。フィクションありなの?」
「
「じゃあ次ね。……アームストロング」
「どれの?」
「宇宙飛行士の」
「じゃあそれで」
「もう! まじめにやんなさいよ。
「やってるさ。……グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」
「イギリスの正式名称。……クリミアの天使」
「ナイチンゲールだね。統計学者でもある。……死亡遊戯」
「ブルース・リーの最後の映画のタイトルよ。かたよってない?」
「大丈夫だって。ほらほら、多分次で最後だから」
「分かったわよ。……銀河英雄伝説」
「遠い未来の銀河系を舞台に繰り広げられる英雄たちの戦争の攻防を2人の軍略家を軸に描くスペースオペラ。お互いの陣営のイデオロギー、歴史背景、交錯する人間模様などを軸に展開する…」
「イヤイヤイヤ! なんでそこだけ詳しいの? おかしいよ!」
そのとき遠くで爆炎があがる。
踊り場から二人が乗り出して見ると、断末魔をあげて崩れていく【魔王樹】と、光となって消えていく夢幻魔竜メビュラストウスの姿があった。
教室からも歓声があがる。
「おっ、倒したみたいだぞ!」
「さっすがメビたん、やったね!」
『ふん、どうということはない。……それとな? メビたんは止めろ、宇海! 格好つかんから! な?』
……今この世界において、異世界から突如現れる巨大な【魔王樹】に対抗できるのは【銀河の暴君】を自称するメビュラストウスだけなのだ。
彼のエネルギーは『言葉』。イメージを伴って
しかしメビュラストゥスに力を与えられるのは、【幻影の牢獄】の封印を解いた時翔と宇海の言語魔法、すなわち『しりとり』だけだった。
だが2人の言葉が尽きたとき、地球はメビュラストウスに飲み込まれる。それはもう一つのこの世の終わりだ。
しかし2人は誰にもそれを言うつもりはない。
その孤独な戦いの理由は単純かつ明快。
「「知識の詰め込みで勉強漬けにさせられる青春なんて冗談じゃない(わよ)!」」
合い言葉は『みんなで
つかの間の勝利に、2人はコーヒーで乾杯した。
「「輝ける明日なき世界に!」」
みんなで終焉われば怖くない! あ、でも努力はします! 桜盛鉄理/クロモリ440 @kuromori4400
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