星屑の丘

 さくさくと夜空の丘を男が歩く。丘の上は割れた星屑が一面に広がっていて仄かに明るい。溜息をひとつ、淡く光る欠片を拾い上げる。

「喜び、思い出」

 目を伏せる。これは人の願いの結晶だ。誰かが捨てたそれが星となってここへ打ち上げられたもの。手の中の欠片は弱々しく点滅している。割れた欠片となってもなお光ろうとする星屑におやすみと囁くと、粉々になって風に溶けた。こうして誰かの願いがまた一つ、風に乗って大地へ還る。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る