私の猫

 私の部屋には猫がいる。瞳の色は黄金だった。毛並みに艶やかな光沢はもう無いけれど、全身に優しい夜の色を纏っているのは今でも同じ。動きを目で追う。空の猫皿を横切り、低い棚から埃を被った三段ケージへ。ぱっと飛び降りて空の猫用ベッド前に着地。堪らなくなって名前を呼べば壁に映る猫の影が振り返った。大好きだよと心からの想いを告げて、平らな壁に手を伸ばす。そうして体を失い影だけになった彼女を、いつまでも撫でる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る