お皿の上の町

 その皿の上には町があった。一見何の変哲もない食器皿だが、その上には山があり畑があり住宅がある。皿を横切るように線路が敷かれて電車まで走っている。

「凄いけど何これ?」

「お皿の記憶だって。自分が食器になる前の事を覚えてるらしいよ」

 にこにこしながら友人は小さな町を指す。

「これね、私が生まれた町。このお皿故郷の工芸品なんだ」

 へえ、と思わず目を瞠る。小さく長閑なその町は、穏やかな友人の雰囲気とよく似ていた。

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