第7話 ドロップ品を売ってみた!
ギルさんたちと別れたあと、私とライムスはゴミ拾いを再開した。
ライムスにお腹の具合を聞いたら『まだまだ食べられるよ』とアピールしてきたので、第二ラウンド開始だ。
「よぉーし。いくよっ、ライムス!」
『きゅぴぴぃ~~っ!』
#
「ふうっ、今日はここまでだね」
時刻は既に16時を回っていた。
ライムスのお腹はまだ大丈夫だった。
けれど、私のほうに限界が来た。
「Fランクモンスターといっても、やっぱり侮れないよ」
体力回復ポーションは5本も持ってきた。
なのに私はその全部を空にしてしまった。
「戦い方が下手なのかなぁ?」
『きゅるるぅっ!』
「そんなことないよって? ふふ、失敗してもそうやって慰めてくれるのはライムスだけだよ。これが岡田さんだったら――」
……って、ダメダメ!
せっかくの休みなんだから!
休みの日は仕事のことは忘れる。
これは私が決めたルールだよ。
ルールは絶対だから、ちゃんと守らないとね。
「さてと。そろそろ帰ろっか、ライムス」
『きゅぴっ!』
電車を降りた私たちは、その足で駅構内に併設されているダンジョンショップに向かった。
ダンジョンショップではいろいろなことができるよ。
装備品を買ったり回復アイテムを買ったりはもちろん、モンスターからドロップしたアイテムを売ることもできる。
他にも、特定のドロップアイテムと武器を預けておくと、より強力な武器を作ってくれたりもするんだって。便利だね~。
「すみません、ドロップ品を売りたいのですが」
丸眼鏡の店員に声を掛ける。
彼は「こちらです」と短く言うと、てくてくと歩き出す。
もしかしてついて来いってことかな?
私たちは男性店員の後を追った。
すると試着室みたいな場所が見えてきた。
「ドロップ品の売却はこちらで行ってください。中のマシンが自動で査定してくれますから、初めての方でも難しくはないはずです。では」
「あ、どうもありがとうございます」
中に入ると無人レジが佇んでいた。
私は適当にタッチスクリーンをタップした。
――探索者の皆さん、こんにちは。アイテムの査定を開始します。査定したいアイテムを、台の上に置いてください。
私はリュックサックの中からドロップ品を取り出した。
今日私が倒せたのは、スライムが4匹、ゴブリンが3匹、ミニ・ワーウルが1匹。
そしてドロップしたアイテムはスライムのゼリーが一つと、ゴブリンの腰巻が一つ。
たかがFランクのアイテムだけど、そのまま持っていても使い道は無いし、少しでもお金になるのなら売ったほうがお得だよね。
私は二つのアイテムを台の上に置いた。
すると赤い光の線が右から左に流れていった。
このレーザーでスキャンしてアイテムを識別してるみたいだね。
――スライムのゼリーが一つ、ゴブリンの腰巻が一つ。併せて50円になります。
「たったの50円か〜。ま、現実ってそんなもんだよね」
結構苦労したけれど、体力回復ポーション一本分にも満たないのは地味にショックだね。
まぁ、お金のためにお掃除してるわけじゃないからいいケド。
出てきたレシートには、スライムのゼリーが20円、ゴブリンの腰巻が30円と書いてあった。
私はレシートを財布に仕舞い、スマホを確認した。
時刻はまだ16時20分。
晩御飯までまだ余裕があるね。
「ちょっとショップ見てみようかな~。他にどんなモノが売られてるのか見てみたいし。もしかしたらライムスにピッタリの装備品が見つかっちゃうかも?」
探索者には職業というものがある。
例えばアマカケのパーティ【天翔ける
そして、職業の中にはテイマーというのもあるんだ。
テイマーはモンスターを使役して戦わせるのが得意なんだ。当然だけど、使役モンスターも装備品次第ではステータスがぐんと伸びたりもするよ。
ちなみに私は探索者としては無職だね。
探索者として職業に就くためには、試練の間っていうところで試練を受けなくちゃならないんだけど、試練を受けるためには探索者としてのレベルが10以上ないと受けられない。
私はまだまだ駆け出しだから、探索者としては無職だよ。
今は私とライムスの生活費を稼ぐので精いっぱいだけど、いつかはテイマーになりたいなぁ……とか、そんなことは漠然と考えてるんだけどね。
まぁ、所詮は夢物語だけど。
なにごともお金を稼げなかったら始まらないしね。
『きゅぴぃ~!』
ライムスも装備品が気になるみたい。
ライムスはスライムだから、スライム族のコーナーに行けば、なにかいいものが見つかるかもしれない……お金が足りるかはまた別の問題だけど。
財布の中身を覗き込んで、思わず苦笑してしまった。
すると何かを察したのか、ライムスがぷるぷると小刻みに揺れ始めた。
「えっ、どうしたの?」
『きゅっ、ぅうっ、ぅぷっ……』
「えっ、え? ライムス、大丈夫!?」
こんなライムス、今まで見たことがない。
ライムスは苦しそうに
そして、ライムスの口からすぽーんっ! と何かが吐き出された。
「え、なにこれ……」
『きゅぅっ、きゅるっぴぃ~~!』
「なになに? 査定してみてって?」
『きゅぴぴぃ~~っ!』
私はライムスが吐き出したアイテムを台の上にのせて査定した。すると。
――ミニ・ワーウルの牙が三つ、ミニ・ワーウルの爪が三つ、ミニ・ワーウルの毛皮が三つ、ミニ・ワーウルの核が三つ。併せて12万270円になります。
併せて12万270円。
その言葉を聞いて、私は開いた口が塞がらない思いだった。
「じゅ、じゅ、12万円!? どどど、どーゆーコト!?」
そしてレシートを見てみると、そこにはこう書かれてあった。
――――――――――――――――――――
ミニ・ワーウルの牙(Fランク)×3……30円×3=90円
ミニ・ワーウルの爪(Fランク)×3……30円×3=90円
ミニ・ワーウルの毛皮(Fランク)×3……30円×3=90円
ミニ・ワーウルの核(Aランク)×3……40000円×3=120000円
――――――――――――――――――――
『きゅるるぅ~~っ!』
「え? ミニ・ワーウルからドロップするアイテムは食べれなかったの?」
こうして私は、また一つライムスのことを知ったのだった。
ライムスは今がもっとも食べ盛り。
そしてライムスは、捕食したモンスターの美味しいところしか食べたくないみたいだね。
「ふふっ」
そんな食わず嫌いなところも子供みたいでかわいらしいね。
そう思うと、自然と笑みが零れてしまった。
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