第3話
「バッカモーン!!!」
某長寿アニメに出てくるお父さんのように国王が王太子であるヴィルヘルム、息子のお気に入りであるルミナ、側近であるシャルルとカール、二人の婚約者であるエトラとベローナを怒鳴りつける。
「まさか、高位貴族の子女であるお前達が辺境伯を単なる田舎の貧乏領主だと思っている馬鹿とは夢にも思わなんだ!」
しかも、聖女であるノルン嬢と婚約破棄しただけではなく、国外追放を言い渡しただと!?
お終いだ・・・
アメジストセージ家だけではなく精霊王と契約できる膨大な魔力を持つ聖女のノルン、そして精霊王を怒らせてしまった事で、ロイヤルミント王国が滅ぶのも時間の問題だと国王と彼等の父親は頭を抱える。
クズでゲス野郎のヴィルヘルムが平民や身分の低い女を弄び孕ませている事を知っている国王は、彼女達に幾ばくかの金銭を渡して黙らせていたし、産まれてきた子供が男児であれば影を使って始末していた。
そんなヴィルヘルムを陰で操る者として国王は、才色兼備で名高く精霊王と契約した事で自国だけではなく諸外国から聖女と謳われているノルンを婚約者として白羽の矢を立てたのだ。
だが、それも徒労に終わってしまった。
他ならぬ我が子によって──・・・。
「父上?たかが地方の、しかも貧乏領主の娘と婚約破棄して国外追放を言い渡したくらいで大げさな」
「バッカモーン!!!」
お前はアメジストセージ家の武名と財力がどれ程のものなのかを知らぬのか!?
国王は六人にアメジストセージ家について語る。
アメジストセージは回復効果の高い薬草が豊富であるが、同時にマナ──・・・精霊と契約する事で使える魔法の源である魔力が豊かな土地でもある。
マナが豊かという事は、魔力を糧にしている怪物や魔物が徘徊するという事でもあるのだ。
それ故、アメジストセージに住む者達は強くならざるを得なくなった。
鍛錬し強くなった住人達は怪物や魔物を退治して毛皮や爪、牙といった素材を得る。
住人達は狩った魔物の素材で作成した武器防具を自分達で使ったり、自国や他国に販売している。
アメジストセージで作られる武器防具、回復薬等はどれも威力と効果が高いので高値で売れるのだ。
地方と他国との交易が盛んな彼等の財力は王家以上のものであると言っても過言ではない。
いや、実際にそうなのだ。
田舎の貧乏領主だと思っていたアメジストセージ家の財力が実は王家を凌ぐもので、建国際に向けてノルンは絹と真珠で飾ったドレスが作れたのかと、ヴィルヘルム達は国王の言葉に納得していた。
それで得た金銭でアメジストセージ家は兵士を鍛えて自分達の土地を護らせる。
当然、兵士達を指揮し奮い立たせるのはアメジストセージ家の者達。
彼等は兵士達と同じ目線に立ち、寝食を共にする事で絆と連帯感を深めていく。
それがアメジストセージ家の武勇を近隣諸国に轟かせ、結果として王国を護る事に繋がっているのだ。
アメジストセージ家の真実を知った六人の顔から血の気が引いていき、とんでもない家を怒らせてしまったのだと今更ながらに身体を震わせる。
「元々、ノルン嬢とノルン嬢の家族はお前との婚約に乗り気ではなかった。今にしてみればお前の最低で最悪な性格を見抜いていたのだろうし、精霊王様はノルン嬢を助けようとしてお前が女を弄んだ様を自国だけではなく他国にも披露したのであろうな・・・」
はぁ~っ・・・
まずはアメジストセージ家に謝罪を入れて、それからヴィルヘルムの新たな婚約者となる・・・いや、好き好んで滅びると分かっている王国の王太子と婚約する娘などおらぬな
(これからの事を考えるだけで胃が痛い・・・)
「父上、安心して下さい!私はノルン嬢があのように清楚で優雅な美しい少女であった事を知らなかっただけです!今の私はノルン嬢に心底惚れています!国外追放と婚約破棄を取り消した上でノルン嬢を妃に迎え共に王国を栄えさせてみせましょう!!」
己の腹に手を置いている国王に、ヴィルヘルムが場違いな宣言をする。
「ヴィルヘルム様!?ついさっきまでノルン様を泥臭い田舎の貧乏娘だと言っていたではありませんか!!私を妃に迎えるという約束はどうなるのです!?」
「ルミナ。お前は自分の姿を鏡に映してみたらどうだ?お前のような品性下劣な女が王太子妃に相応しいはずがないわ!!」
私の隣に相応しい娘はノルン嬢だけだ!!
「バッカモーン!!!」
ヴィルヘルムとルミナの勝手な言い分に国王が三度目の、某長寿アニメに出てくるお父さんのように喝を入れる。
「ノルン嬢とノルン嬢の家族はお前との婚約に乗り気ではなかったと言ったであろうが!それに・・・ノルン嬢の事だ。今頃、お前との婚約が破棄されたという事実に諸手を挙げて喜んでいるに決まっておるわ!!」
「そんな事はありません!私に婚約破棄されたノルン嬢は嘆き悲しんでいます。そのノルン嬢に私自らが婚約破棄を取り消すと言えば、彼女が流す嘆きの涙は喜びの涙へと変わるでしょう・・・」
(私とノルンとの間に出来る娘は美しいに決まっている!まずは娘を・・・いや、ノルンを私好みの淫乱に調教したら次は娘だ。そして、娘が年頃になったら三人で楽しまないとな)
国王の言葉など耳に入っていないのか、ヴィルヘルムはエロ同人誌に出てくる男がやる所業を思い描いていた。
というか、実行する気満々である。
(・・・い、胃がキリキリと痛む)
どこをどうすれば、こんな風に育ってしまうのだろうか?
吟遊詩人のようにうっとりとした表情で語る我が子の教育の失敗を思い胃が痛くなってしまったのか、再び己の腹に手を当てて涙を流す国王であった。
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