失恋した。だけどそれは君もだったらしい。

キタカワ。

第1章 失恋

第1話 現実逃避

 俺の名前は夏野青空なつのそら

 

 名前は”青空”だけど、梅雨生まれの雨男。


 ちなみにクラスでの存在感は、どこまでも澄み切った空気だ。

 これに関しては”そら”っぽいかもしれないけど、そらはそらでも”なつのそら”じゃなくて”ふゆのそら”に近い澄み具合だと思う。


 成績は悪くない。でも、平均の域は出ない。


 運動神経は良くない。でも、特別悪い訳でもない。


 外見は本当に普通……だと思う。不細工って程ではないけれど、とてもイケメンとは言えない。


 コミュ力はあまり無い。でも、話しかけられたら一応会話はできる。

 全く弾まない面白みのない会話しかできないとか言わないでほしい。オーバーキルだから。


 ともかく、そんな人間偏差値45を自認する俺は今、学校の廊下を全力疾走していた。


 廊下に、足音が響く。

 足音が重なって二つ聞こえるが、きっと耳がおかしくなったんだろう。


 だから鼻の奥がツンと痛むのも、気のせいだ。


 ……誰が何と言おうと、気のせいだ。


 決して泣きそうなわけではない。


 俺は制服の袖で乱暴に目元を拭った。


 鼻から息を吸うと、ズズッと音が鳴った。


 眼前の景色が、どうもぼやける。


 でもこれは、決して涙のせいではない。


 窓の外、遠くに見える信号が幾重にも重なって見えるのも、決して涙のせいなんかじゃない。


 ……だって、親友が……こんな俺にはもったいないくらいの親友が、あんなに幸せそうなんだから。


 それなのに、親友の俺が涙を流すなんて意味が分からないじゃないか。


 半ば言い聞かせるように、廊下を走りながら頭の中で繰り返す。


 先生が怒っている声が聞こえた。


 廊下をダッシュしている俺を怒っているのだろう。


 そう分かっているけれど、止まる気にはなれなかった。


 俺は靴箱で靴を履き替えることすらせず、学校を飛び出した。


 西側に沈む夕日が、無駄に綺麗で。

 眩しくて。


 心を突き刺してくる気がした。







[あとがき]


 こんにちは、作者のキタカワ。です。

 これから2日に一回のペースで更新していくつもりなのでどうかよろしくお願いします!!

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