6 それぞれの選ぶ未来

第52話6-1 1年後のこと

6ー1 1年後のこと


アウデミスとの出会いから約一年が過ぎた。

あれから、僕は、地下に潜り、表には、商業ギルドのアゼリアさんが出てくれている。

まあ、その辺は、今までと変わりないといえば変わりないのかも。

アリーには、今は、ストレージ内で主に事務仕事をしてもらっている。

彼女とナツキ兄さんは、アウデミスに面が割れてるからね。

だけど、カスケード王国には、特に、変わった動きはなかった。

アウデミス王は、『カンパニュラ』グループと通信の分野においての契約を結び、それを国軍において利用していたが、今のところ、僕たちへの介入はなかった。

「何をたくらんでいる?アウデミス」

ハヅキ兄さんは、ガン泣きしている赤ん坊をあやしながら言った。

うん。

ハヅキ兄さんは、最近、結婚したんだ。

相手は、エルフのメイドさん、フローラさんだ。

2人は、なんと出来ちゃった婚だった。

あの日、突然、『クローランス屋敷』へと逃げ込んだ僕らを受け入れ、世話をしてくれていたフローラさんだったけど、彼女は、男性恐怖症になっていた。

特に、大人の男が怖かったらしい。

無理もなかった。

彼女が、今までどんな目にあわされていたか考えたら、仕方のないことだった。

そういうわけで、彼女は、最初、ハヅキ兄さんや、ナツキ兄さんのことを怖がって、なかなか話をすることもできなかった。

そんな彼女に一目惚れをしたハヅキ兄さんは、時間をかけて、彼女に思いを伝えていった。

それは、なかなか大変なことだった。

ハヅキ兄さんは、何度も、泣かされていた。

2人のことを見ていた僕がいうのだから、間違いない。

そうして、この度無事に結ばれたというわけだった。

そうそう、2人の子供であり、僕の姪でもある赤ん坊の話をしようか。

その子は、フローラさんに似て、すごくかわいいんだけど、なんか、時々、目付きが兄さんに似ていて悪くなることがある。

彼女の名前は、アロアという。

紺色の髪に、菫色の瞳のアロアは、周囲のみんなに愛されて健やかに育っている。

今では、『クローランス屋敷』の主は、兄さんとフローラさんと、赤ん坊のアロアだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る