第45話5-4 あなたの妻になりたい
5ー4 あなたの妻になりたい
「すみませんでした・・」
ストレージから戻したアーシェが僕に頭を下げた。
「あいつの仕打ちに・・思わず・・」
「ああ」
僕は、頷いた。
「仕方ないさ」
ああ。
だけど。
僕は、すでに奴に目をつけられてしまった。
「奴にお前のこと気づかれてしまったな」
部屋に戻ってきたナツキ兄さんが僕にそっと言った。
僕は、頷いた。
ナツキ兄さんがアリーに言った。
「ユヅキを王都に帰そう」
「はい。すぐに手配を」
「待って!」
僕は、2人に言った。
「今帰れば、ますます怪しまれる。帰るのは、実験が終わってから、だ」
「しかし」
渋るナツキ兄さんに僕は、にこっと微笑んだ。
「大丈夫だよ。兄さん」
大丈夫。
たぶん、まだ、大丈夫、だ。
僕は、ぎゅっと拳を握りしめた。
今は、まだ、ひけない。
もっと。
もっと、王と対抗する力を手にしなくては。
僕には、守るべきものがたくさんあるんだ。
夜遅くにフランシスがやってきた。
「大丈夫か?ユヅキ」
「フランシス?」
僕は、驚いていたけど、にっこりと微笑みを浮かべた。
「来てくれるとは、思わなかった」
「ああ。いつの間にか、会場から姿を消していたから、心配して来たんだぞ。体調でも悪いのか?」
フランシスが聞いたので、僕は、答えた。
「大丈夫。僕は、大丈夫だよ。君は?こんな時間に、こんなところに来て大丈夫なの?」
「ああ」
フランシスは、頷いた。
「あなたたちのことに気を配るのが、私の仕事のうちだからな」
フランシスと僕は、2人、部屋の外のベランダに出て話をした。
夜風に吹かれていると、少し、心が静まってきた。
「君の兄さん・・アウデミス王は、何の力を持っているんだ?」
僕は、きいた。
「あの禍々しい力・・あれは、まるで・・」
「ああ」
フランシスは、僕の口許に指でふさいだ。
「言ってはいけない。それは、ここでは、タブーだ」
「しかし・・」
僕らは、しばらく黙り込んだ。
フランシスがやがて、口を開いた。
「婚約・・したんだって?」
「うん」
僕は、肯定した。
「ちょっと訳ありでね」
「・・いいな・・オルガたちが羨ましい」
フランシスが星空を仰いでふっと寂しげに微笑した。
「私も・・いつか、あなたの・・その・・」
フランシスが真っ赤になって言った。
「あなたの・・つ、妻にしてくれるか?」
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