第43話5-2 『生命の書』
5ー2 『生命の書』
『生命の書』
それは、この世界に顕現したいくつかの神器の内で最強の神器。
今は、カスケード王国の王都にある王城の地下に封じられているという。
それを手に入れれば、世界を手に入れることができるといわれているものだ。
だが。
それを手に入れるためには、光の御子の命を差し出さなくてはならない。
「なぜ、アウデミスは、そんなものをほしがるんです?」
アーシェがきいたので、僕は、頭を振った。
「わからないよ」
「魔王を倒すため、ですか?」
僕の脳裏にアルゼンテの顔が浮かんだ。
アルゼンテ。
最初は、ちょっとウザいと思っていたけど、今じゃ、いるのが当然な存在になっている。
オルガとも仲いいしな。
「もしかしたら、そうなのかもしれないけど、本当に、僕にも、なぜ、アウデミスが『生命の書』を求めるのか、わからないんだ」
「なんにせよ」
アーシェは、言った。
「奴が、もしも、あなたの敵となるのなら、俺は、あなたのために盾となります」
「アーシェ」
僕は、アーシェに微笑んだ。
「ありがとう、アーシェ」
アーシェは、照れたように頬を赤く染めてうつ向いた。
うん。
アーシェは、知らない方がいいよね?
僕が、光の御子だってことは。
その夜、僕らを歓迎するためのパーティーが開かれた。
パーティーとはいえ、ちょっとした集いのようなものだろう、と僕は思っていた。
だが。
きらびやかなシャンデリアの下で開かれたのは、王都と変わらぬパーティーだった。
まあ、もともとが娯楽の少ないこの世界のことだ。
パーティーといってもちょっと集まって会食して酒を飲むぐらいのことだった。
でもそれをこの戦争の最前線で行えるということに、僕は、アウデミス王の権力を思い知った。
そして、この王の異常さを。
このパルカスの街は、つい、この前まで戦場だった場所だ。
まだ、街には、怪我をした人やら、飢えた人が溢れている。
それなのに、ここでは、こんなパーティーが開かれている。
その差に、僕は、心が痛んだ。
「これが、戦争というものなんだよ」
ナツキ兄さんがポツリと呟いた。
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