第40話4-10 アーシェ

4ー10 アーシェ


僕は、2人に訊ねた。

「アーシェは?」

僕の問いに2人は、少し、むっとしていた。

「いつもの研究室にいる」

僕は、庭にある温室へと向かった。

広い庭の一角にあるガラス張りの温室の扉を開くと緑の髪の裸の少女が僕を見上げて立っていた。

「ほら、ユヅキが来たでしょ?」

「ユヅキ」

奥から数人の 緑の髪の裸の子供たちが出てきて僕の回りを取り囲んだ。

「ユヅキ、おかえり!」

「こらこら、ユヅキが困ってるじゃないか、みんな」

子供たちの後ろからアーシェが現れた。

ボサボサの白い髪に青い目をしたその少年は、僕を中に招くと子供たちを追い払ってから、僕に椅子をすすめた。

「どうでした?ギルドの方は」

「うん。おおむねいい反応だったよ」

僕は、答えた。

「それより、どうかな?ドライアドたちの方は」

「ええ、彼らは、すこぶる元気ですよ」

アーシェは、自分も椅子に腰かけると僕にハチミツ茶の入ったカップを差し出した。

「やっぱりうちの村のハチミツ茶が一番ですね。疲れがとれますよ」

「そうだね」

僕は、一口お茶を飲んだ。

ああ。

癒される。

「Dコミュニケーションの方は、どう?」

「はい、順調です」

アーシェが言った。

「いつでも実用化できますよ」

「そうか。それは、よかった」

僕は、頷いた。

「今度、最前線に行くことにした」

「誰が、ですか?」

アーシェに僕は、自分をさして言った。

「もちろん、僕が、だよ」

「はい?」

ハトマメ状態のアーシェがはっと気づいてわめいた。

「ダメですよ!お兄さんたちに俺が殺されます!」

「大丈夫だよ、アーシェ」

僕は、笑った。

「僕は、ただの通信技師として実験に参加するだけだからね。別に、戦いに行く訳じゃない。ただ」

僕は、溜め息をついた。

「王が・・アウデミス陛下が実験に立ち会うらしい」

「奴が・・ですか?」

アーシェの瞳が怒りに青く輝いた。彼の体が膨れ上がり、全身がふさふさの体毛に覆われていく。

低い地響きのように響く卯なり声。

「あの、悪魔が、来る・・」

「アーシェ、気持ちはわかるけど、押さえてくれ」

僕は、言った。


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