第26話3-6 家を買いました。
3ー6 家を買いました。
ふわっとローリの葉のいい香りが溢れ出す。
「うん。なかなかいい香りだが、これは?」
「これは、肉と煮込むと肉が美味しくなるハーブというものです」
僕は、またストレージから皿を取り出した。
なんの変哲もないシチューの入ったお椀だ。
テーブルに置くと、アゼリアさんは、香りを嗅いだ後、すぐに食べ始めた。
「柔らかくてジューシーな肉、だ。これも同じポルクの肉なのか?」
「はい」
僕は、頷いた。アゼリアさんは、唸った。
「こちらのはーぶ、とやらもあるだけ買おう」
アゼリアさんは、僕に改まって言った。
「どうだろうか、ユヅキくん。この商業ギルドの会員になってもらえないだろうか?」
「でも、僕は、実は、無職なので・・」
「はい?」
アゼリアさんは、訝しげに僕を見つめた。
「無職、だって?」
僕は、冒険者ギルドでのことをアゼリアさんに話した。彼女は、黙ってきいていたが、やがて、僕に言った。
「商業ギルドでは、神託には、こだわらんからな。大丈夫、だ」
こうして、僕は、商業ギルドの一員になった。
アゼリアさんは、胡椒とハーブを金貨500枚で買ってくれた。
「これだけあれば、家を借りることができますか?」
僕がきくとアゼリアさんは、笑いながら言った。
「借りるどころか、家を買うことができるぞ。どんな物件を探しているんだ?」
「実は、店を開きたくって」
「店、か」
アゼリアさんは、興味を持った様子できいてきた。
「なんの店だ?」
「いえ、その、ただの薬草の店です」
「なら、ちょうどいい物件があるぞ」
アゼリアさんがにっこり微笑んだ。
「ユヅキになら、特別に格安で手配しよう」
アゼリアさんが紹介してくれた店舗兼住居は、商業ギルドのすぐ近く、つまり王都 グリニッジの中央通りに面した最高の立地条件にあるものだった。
緑の瓦屋根の小さな可愛らしい家で、2階が住居部分になっていた。
小さいが台所もついているし、裏には畑も作れる庭があった。
ちょっと掃除をしたりしなくてはいけないが、けっこういい物件だった。
僕は、ここを買うことにした。
即金で金貨300枚。
僕は、相場を知らないから、高いのか安いのかは、よくわからない。
でも、この家を気に入ったんだ。
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