【第一章】 美少女と、観光名所で家族を知る

第1話

※こちらの作品は、『勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~』の続編であり、第二部です。

この話から読んでも意味が分からないため、まずは第一部の小説からお読みください。






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 静かな森をリディアとともに歩く。

 足取りは重い。


「ヴァネッサさんとドロシーさんは、どこにもいませんでしたね」


「すでに森を出た後だったのじゃろう。あまり心配せずとも、あの二人ならきっと大丈夫じゃ。精神的にはヴァネッサが、物理的にはドロシーが、お互いを守るじゃろうから」


「そう、ですよね……」


 クシューと別れてからすぐに俺とリディアは森の中を探したが、ヴァネッサの姿もドロシーの姿も見当たらなかった。

 血の類も見当たらなかったため、何者かに襲われたわけではなく、自主的に森を出たのだろう。


「ドロシーは、村を滅ぼした魔物と同じ種族というだけで、妾に対して複雑な感情を抱いていた子じゃ。ショーンが現魔王であるクシューと同じ顔であり同胞であると知った今、一緒に旅をするのは無理というものじゃよ」


「俺は俺、クシューはクシュー……と割り切れるものでもありませんよね。村を全滅させられているんですから」


 ドロシーの住んでいた村を全滅させたのは、クシューの手下の魔物だった。

 クシューが直接手を下したわけではないが、クシューが指示を出さなければ起こらなかった悲劇だ。

 ドロシーのクシューに対する憎しみは相当なものだろう。


「……ドロシーは仲間なのに、俺には何も出来ないことが歯がゆいです」


「当然じゃ。過去は誰にも変えられん。ゆえにショーンが今考えるべきことはそれではない。この世界の存続についてじゃ」


 この世界の存続について。

 俺の手には負えない大きな議題だが、それでも俺は結論を出さなければならない。


「そう難しく考えることはない。まずはこの世界をもっとよく知って、この世界に残すべき価値があるのかどうかを判断すればいいのじゃ。つまりは旅をすればよい」


 リディアはいつもと変わらない様子で、俺の隣を歩いている。


「リディアさんは、俺がこの世界を残そうと思えるように細工はしないんですか? 魔法の中には洗脳魔法なんていうものもあるんでしょう? カーティスさんが言ってましたよ」


「フン。妾は洗脳魔法などという下品な魔法は使わん。そんなものを使って自分の思想を押し付けても、虚しいだけじゃ」


「虚しいって……世界の命運が掛かってるのに」


 世界の命運が掛かっているのなら、自分の虚しさは一旦置いておいて、世界を優先するべきではないだろうか。


「大義名分があるからズルをしても良いという考えを、妾は好まぬ。妾はいつだって正々堂々戦いたいタイプなんじゃ」


「リディアさんは正々堂々ではなく、偶然を装って俺に近付きましたよね?」


「…………」


 リディアは俺の言葉が聞こえなかったとでも言うように口笛を吹き始めた。

 誤魔化し方が下手にもほどがある。


「まあいいですけど。俺はこれからも旅をするつもりです。期限が来るギリギリまで。リディアさんはどうしますか?」


「ショーンが旅をするなら、妾も一緒に旅をするに決まっているであろう」


「では、次の目的地は……どこに行きましょうかね」


「ショーンの好きにするとよい。良い未来を掴んだ行き先へ行けるかもしれんからのう」


 リディアが言っているのは、俺のラッキーメイカーのことだろう。

 欲しい未来へ繋がる因果を掴み取るユニークスキル……ではなかった。

 上位世界の存在である俺が、主の世界へと繋がる道で、下位世界であるこの世界の未来を視て、その未来に繋がる因果を選ぶ能力。

 しかし。


「俺は旅の行き先を決める程度のことで、あの道へ行くつもりはありませんよ」


「ショーンは気付いておらんのか? お主の能力は進化しておる。それとも使い方を思い出したと言った方が正確かのう」


「何の話ですか」


「因果の世界にダイブする。ショーンはそう表現していたな。隙だらけになって、別の場所へ意識を飛ばしていた」


 俺がラッキーメイカーを使う際の話だろう。

 いや、ユニークスキルではないから名前なんて無いのだが、便宜上ラッキーメイカーと呼んでおこう。

 ラッキーメイカーを使う際、俺は無防備になってしまう。意識をあの道へ飛ばしているからだ。


「これは妾の予想じゃが、今のショーンは意識を飛ばさずとも、自然にラッキーメイカーが使えるのではないか?」


「……え?」


「自然と最善の未来へと繋がる因果を掴み取っている。もちろんすべての行動がそうではないが、要所要所では最善の結果を外さない。そうは思わんか?」


 リディアが可愛らしく、こてんと首を傾けた。






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お待たせしました!今日から連載を開始します!

しばらくは週2回、火曜日と金曜日の17:30の更新となります。

お暇でしたら読んでやってくださいな^^


※次回更新は、6月14日(金)予定です。

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