第6話 学費

 大学三年生の秋、私は後期の大学の学費を払えないことに気づきました。

 私は大学一年生から奨学金を借りていましたが、家の事情もあって、大学三年生から奨学金の増額を申請していたのです。しかし、大学側の不手際で、申請が滞っていました。早急に対応をお願いしましたが、後期の学費支払いには到底間に合いそうにありませんでした。そのため、私は後期分の学費を自分で用意しなければならなくなりました。十一月にはバイトをかけ持ちし、就活の予定は前々から決まっていた面接の予定以外入れませんでした。新しく説明会に参加することもできず、私の就活はここで一旦中断しました。もちろん、その状況に焦りを感じていました。早く就活を再開しなければと思ってはいましたが、学費のためにアルバイトをしなければならないという現実を言い訳にして、就活を中断できることにうれしさも感じていました。

 私はそのまま、一月までアルバイト漬けの日々を送っていました。大学三年生の二月、私は就活を再開しました。その時点で、面接まで進んでいた企業は五社ほどあり、二月から新しく説明会に参加して、持ち駒をふやしていきました。それまでの生活とは打って変わって、二月は就活漬けの日々を送りました。毎日あったアルバイトを週に二回に減らし、空いた時間はエントリーシートの作成に費やしました。就活を一時中断した遅れを取り戻さなければならない。就活が嫌で嫌でたまらないという気持ちは、この時もまだありましたが、もうそんなことばかり言ってられません。大学四年生から実習も忙しくなります。それがわかっていたので、私は大学が始まるまでは、就活に全力を注ぎ、大学が始まる頃には内定を得ている、そういう状況を目指そうと心に決めました。

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