第458話 タコ料理作らなイカ!?

 みんなと色々な話をして情報収集できたから満足!

 海鮮パーティもそろそろお開きの時間かなぁ、と思ったところでルトが「あ、そうだ」と声を上げた。


「どうしたのー?」


 口から飛び出るスルメをなんとか口に収めようと四苦八苦しながら、僕はルトに問いかけた。

 喋る度に、スルメがぴょこぴょこする。タマモたちに微笑ましげに見つめられて、ちょっぴり恥ずかしい。


宿借蛸パクルオクトを倒した時に触腕もらったろ? あれ、料理してくれねぇか?」

「あ、そういえば、もらったねぇ。浄化しないと食べられないやつ」


 ルトに言われて思い出した。

 どういう味なのか気になる〜。


 みんなもソワソワしてて興味津々な感じだったから、今日のパーティーのイベントとして、宿借蛸パクルオクト料理を作ることにした。

 何を作ろうかな〜。


「俺たちのも一緒に使ってくれ」

「はーい、ありがとー」


 ルトとリリから宿借蛸パクルオクトの触腕を受け取る。

 改めて見ても黒くて怪しい雰囲気が漂ってるなぁ。まずは浄化しないとね。

 僕が持っている分もアイテムボックスから取り出して、準備はオッケー。


「──【浄化】!」


 スキルを使うと、溢れた白い光が宿借蛸パクルオクトの触腕を覆い隠す。

 その光が消えた後には、宿借蛸パクルオクトの触腕は真っ白に変わっていた。


「浄化って凄い!」


 思わず驚きの声を上げた僕の横で、ルトが「むしろ、元はこの白色だったんだろうから、それを黒色に染め上げた穢れがヤバすぎじゃね?」とドン引きしている。

 言われてみるとそうだね。穢れって怖い……。


「つまり、モモさんが穢れたら、漆黒の堕天兎になる……!?」


 ヤナが雷に撃たれたかのように衝撃を受けた感じで呟くと、なぜかその言葉はもふもふ教の中で伝染していった。


「堕天モモさん……うぅ、悲しいのと同時に、新たな萌えの気配を感じてしまう……!」

「絶対可愛いじゃん……堕天使様かぁ」

「穢れなき神を想像の中で穢すなんて罪深いとわかっているのに……」

「罪深き我々を、どうかお許しください……!」


 みんなで懺悔するようにお祈りポーズをしてる。

 それを見て僕はちょっと引いてるよ。ねぇ、気づいて。


「……相変わらずヤベェ連中だな」


 ルトは一切隠すことなくドン引きしていた。その横でリリがケラケラと笑ってる。

 この二人の温度差もすごく大きいよね。


「ルトがきっかけなんだから、どうにかしてよ」

「はあ!? 俺じゃねぇだろ、コイツだろ!」


 ルトが「断固拒否! 俺の手には負えねえ!」と首を振りながら、ビシッとヤナを指す。


 ヤナは周囲を混沌に落としたことを一切気にしてない感じで、作っていたホタテのバター焼きをぷる君に「あーん」とあげていた。マイペースだなぁ。


「? ルトさんも食べます?」

「そういう話はしてねぇからっ」

「あ、モモさん、イカのバター醤油焼きを食べなイカ!?」

「地味なダジャレを急にぶっ込んでくるのやめて」


 真顔で注意したのに、ヤナは「イカにしてイーカんじに焼いたかは聞いちゃイカん」とダジャレを重ねながら、僕にイカのバター醤油焼きを渡してきた。

 ダジャレはともかく、美味しそうだから食べるよ。


「あははっ、ふははっ、骨パイセン最高!」

「リコ、あのレベルのダジャレで笑うのは引くんだけど」


 お腹を抱えて笑っているリコを、ナディアが冷めた目で見下ろしていた。

 このコンビも温度差大きいよね。ボケとツッコミが状況によって入れ替わるから、見ていて面白い。


「骨パイセン……?」


 ちょっぴり気になったフレーズを呟いたら、全員にスルーされた。

 聞いちゃいけなかったのか。


「モモの周りって、キャラが濃いにゃ」

「僕たち埋没しちゃいますね。個性的な見た目だけではダメそうです」

「俺のキャラ、もっと濃くした方がいいか……?」

「それはヤメロにゃ」

「それ以上になったら仲間やめます」


 初期希少種会のムギ、ソウタ、ツッキーがパクパクとご飯を食べながら傍観してる。もうちょっと僕に寄り添ってくれてもよくない?

 それと、ツッキーがチャラいを超えたキャラになったら、僕も友だちやめます。


「とりあえず、タコ料理作ります! 誰か手伝って!」


 闇鍋感が漂う状況を打開しようと、僕は声を張り上げた。

 すぐさまナディアが手を挙げる。


「お任せください! なんでも作りますよ」

「うん、よろしくね」


 心強い料理仲間ができて嬉しいな。

 ちょっぴりテンションを上げながら、二人でメニューを考える。

 宿借蛸パクルオクトの触腕は大きいから、一つで一つのメニューを大量に作れるっぽいんだよね。つまり、僕とルト、リリが出した三つの触腕で、三種類の料理を作れるはず。


「タコといえば、タコ焼きは外せないです」

「そうだねぇ。海で食べるメニューとしても、いい感じ。お祭りっぽさもあるし」

「あとは……タコの味をそのまま楽しむために、刺身かカルパッチョはどうですか?」

「それなら切るだけだから、つけるもののアレンジでよさそうだね」

「となると、もう一種類作れますね。うーん……シンプルに唐揚げ?」

「いいね! 簡単な方が作りやすいし」


 こんな感じの話し合いの末に、タコ焼きと刺身&カルパッチョ、唐揚げを作ることになった。

 よーし、みんなが驚くくらい美味しい料理を作るぞー。


 ナディアと「えいえいおー」と気合いを入れていたら、タマモたちが何かコソコソと話し合っているのが視界の端に見えた。


 え、なんか企んでる?

 ……まあ、タマモのことだから悪いことは起きないだろうし、僕は僕の作業をがんばろっと。


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