第10話

ある程度走るとアップを始めた。俺の野球部はアップとかは自分で時間を使ってやってくれといったスタイルなのだ。だから怪我をしないように入念に準備をする。ピッチャーは怪我をするのが一番注意をしなくちゃいけないものだからだ。アップを十三分ほどやってキャッチボールの相手を探す。


「あ、礼治キャッチボールしないか?」


ちょうどいつもピッチングを受けてもらっている同年代の礼治が空いていたので、キャッチボールをしないかと言った。


「ああいいぞ。夏の大会にベンチ入りするためにも、お前の状態で変わってくるからな」


礼治は今は俺専門のキャッチャーだから、俺がベンチ入りしないと、ベンチ入りできないからな。それだけここのキャッチャー層は厚い。まぁ進学校たから頭がいいやつが多いからキャッチャーは激戦区なんだろう。ピッチャーは多いくてエースはすごいが、そこまで優秀なピッチャーは少ない。だからベンチ入りの可能性は高い。


「それじゃ俺は頑張るか」


「ああ、よろしくな。それじゃ俺はボール持ってくるから先いっていいぞ」


そう言われたので俺は先にグラウンドに向かった。そして投げる前の柔軟体操をしてると、視線を感じたので、そっちの方を向いたら優花が笑顔で手を振っていた。それ手を振り返すと、満足したような顔になった。少し経つと礼治が来た。


「お前あの美少女とどんな関係なんだ?うちのクラスでも話題になっていたぞ中学校からめちゃくちゃ可愛い美少女が来たと。あの振られまくっているお前があんな美少女と知り合いなのに驚いているわ」


「あれ俺の妹なんだよ」


まぁ似てないし分からないのも無理ないが。というか他のクラスでも話題になっていたんだな。俺クラスでは義孝と楓以外話さないから分からなかったわ。クラスどころか部活以外の男の知り合いだと義孝以外いないが。なにそれ悲しい。ちなみに女子は義孝関連で何人かとは知り合いだ。まぁみんな義孝が好きなんだけどな。


「まじか、全然似てないな。正直理にもようやく春が来たと思ったんだが」


「俺にあんな美少女の彼女ができるかよ」


「美少女ばっかしに告白してるくせによくいうぜ。勝機がないのに告白してるのか?」


桃井先輩に告白するまでは勝機あるとしか思わなかったが、振られてから俺のことを好きになる奇特なやつなんているのかと思い始めてるからな。まぁそれでも多分好きな人ができたら告白するんだろうけどな。やんない後悔よりやって後悔した方がいいからな。


「告白したときは勝機あると思ったんだよ。それはいいからとりあえずキャッチボールしようぜ」


礼治は分かったと言って俺の正面に立った。それから軽く投げてきてキャッチボールを開始する。そしてだんだん距離が離れていってストレートの回転を意識しながら投げていく。今日は球が伸びるな。楓に慰めてもらったお陰で吹っ切れることができたからだろう。今度楓にはお礼になにか渡すか。


そしてカットボールも混ぜながらあるていどの距離で全力で投げる。そしてキャッチボールを終えると、俺達は荷物の置いてある場所に戻った。そこで休憩をしてると、楓が来た。


「お兄ちゃんやっぱり野球やってるときは輝いているねぇー。ピッチングも楽しみにしてるよー」


「ああ、俺の成長した姿を見せてやるよ。一ヶ月前から球も早くなったしな」


優花が最後に見たときより玉は勢いを増している。夏の大会に向けて調整してきたからな。絶対にベンチ入りしてやる。文武両道というのも見せてやる。


「ほうほうそれは楽しみですなぁー。それじゃ真後ろで見させてもらうよ」


すると礼治がこっちにやってきた。チョコを食べながら来た。礼治は好きだよなチョコ。毎回休憩してるとき食べてる気がする。もはやルーティーンとかしている。

 

「おー理の妹近くから見ると噂にたがえないくらい美少女だな」


「あ、ナンパは間に合っているんで」


「理の妹を正面からナンパしたりはしねーよ。他の野球部員は分からないが」


「そうなんですね。てっきりまたナンパされるのかと思いました」


キャッチボール見てたときはナンパされたのかよ。いや美少女だから気持ちは分からんでもないが。だが優花は好きな人がいるから例え主人公でも無理だろう。なぜか好きな人がいる人には主人公効果は発揮しなかったんだよな。ちなみに優花の好きな人はイケメンだ。しかもお金持ちだ。お父さんもお母さんも会社を経営していて、どっちもそれなりの年商を稼いでいるのだ。しかもどっちも美形だしな。天は何物も与えたいい例だ。神様不平等である。


「学校でもされているのか?」


「好きな人がいるって毎回断っていたら少なくはなったよ」


少なくなったってことはまだいるんだな。多分相当自分に自信を持っているやつか、勘違いをしてるやつだろう。優花は誰にでも優しく話しかけているから、勘違いしてるやつもいるのだろう。俺も好きな人が知らなかったら勘違いしてたかもしれないしな。


「あんまり人を落としすぎたりするなよ」


「分かってるよー。最近は誰にでも同じ対応するのは止めたよー」


怖いのは振った人がストカーになることだ。きっとそれをされたから止めたんだろうがな。

















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