挑戦先生
問屋持丸
第1話 責任
夏の総体が終わった。
この学校、涼風中に赴任してから色んな策を講じたが、この3年生を県大会に連れていくことはできなかった。市大会2回戦敗退だった。勝てば選手のおかげだが、負ければ監督の責任というのはよく言うことだが、まさにその通りだと思っている私からすると本当に3年生には申し訳ない試合運びをしてしまったのだ。3-2で負けていた6回裏、1OUT3塁でバッター5番。左対左で、次から下位打線だったこともありここは同点にしておきたかった。スクイズのサインを出した。初球を後ろにファールしたことは知っていた。タイミングは合っている。それでも、焦ってしまった。
結果は、バッテリーにウエストされてしまい3塁ランナータッチアウト。その後バッターは三球三振でスリーアウトチェンジ。
一言で言えば「最悪」だった。
そのまま7回裏も6,7,8と3人で終わり、中学の軟式野球大会は7イニング制なので試合終了。勝てる力はあったはずだったのに。
この後悔を活かすべく、次の世代を確実に県大会まで持っていくことを心に決めた。もう、あんな思いはしたくない。
ここからの数年は、「挑戦」を心がけよう。
2年生は8人、1年生は9人。うち男15人、女2人の計17人の軟式野球部。実績は市大会2回戦敗退。さぁ、この部をどこまで伸ばせるかは私にかかっている。
2年生ピッチャーは本格派の早川忍大(ハヤカワ・ニンタ ♂ 右左)、変則サイドの南斗磨(ミナミ・トウマ ♂ 右右)と左の速球派、五十嵐慎太郎(イガラシ・シンタロウ ♂ 左左)の3人。キャッチャーは伊地知朔(イジチ・サク ♂ 右右)、セカンド多喜渚(タキ・ナギサ ♀ 右右)、サード千代浦龍司(チヨウラ・リュウジ ♂ 右右)、ショート商山好人(アキヤマ・ヨシヒト ♂ 右左)、センター花神風夏(ハナガミ・フウカ ♀ 左左)の8人。早川、南、五十嵐が投げていない時には、それぞれレフト、ファースト、ライトを守る。1年生は、ポジションが細かく決まっていないのでバッサリ言うと、
投手 本格派 日野颯太(ヒノ・ソウタ 右右)
制球型 神戸弦(カンベ・ゲン 右左)
他1名
捕手 中川寛太(ナカガワ・カンタ 右右)
他1名
内野手 鈴城疾風(スズシロ・ハヤテ 右左)
桜庭凪人(サクラバ・ナギト 右右)
外野手 古川涼(フルカワ・リョウ 右左)
八王子晴大(ハチオウジ・セイタ 右右)
希望は投手3捕手2内野2外野2。ただサブまではまだ聞いていない。またこの学年には左投げがいない。
2年本格派早川は、あまり調子が崩れることがない。長いイニングを投げられる、貴重な投手だ。打席ではチャンスに強く、常にダイナミックで古くからの野球というものを体現している。前の代から主に大差のロングリリーフとして度々投げさせていて、投手の負担削減に貢献して貰っていた。エース候補。
南は横からスライダーとシュートを投げ分け、打者を翻弄するスタイル。元々上から投げていたが、制球難に苦しみ、イップス気味となりサイドスローに転向。ポテンシャルの部分ではこの代の中では控えめだが、真面目で努力家なため自分なりにチームにできることを考えた結果、サイドスローに転向し、打者を翻弄するために変化球をとにかく磨いている。シュートはまだ未完成だが、スライダーにはキレがあり、南にとっても自信を持って投げられるボールだろう。野手としても、元々守備が絶望的に下手だったのに送球も不安定になってしまったので、捕球のコツをどうにかして掴んでもらって、ファーストをなんとか守らせている。打席では小技が上手く、真面目な人柄が出ているのかもしれない。またごく稀に長打を打つが、はっきり言って鈍足なため、度々三塁でアウトになるなどやらかしている。真面目な性格が裏目に…
五十嵐は制球こそ荒れるものの、バンバン速球を投げ込んでいく。ノビがあり、調子がいい時は三振をどんどん奪っていく。また対右打者のインコースにズバッと決まって三振を取ることが多い。打席では、意外にも綺麗に流すことや、ヒットゾーンに落とすバッティングが出来る。
キャッチャーの伊地知は、二塁到達タイム2秒13の強肩の持ち主で、それぞれのピッチャーのスタイルに合わせたリードが出来る。また長打が打てる。が、三振も凄く多い。
サード千代浦は、打球反応の早さと球際の強さがピカイチである。またチームの主砲でもある。送球には一抹の不安があり、それ故に南が登板時には1年の鈴城にサードを任せ、千代浦にはファーストをやらせることもしばしば。球際は強いので、送球を受ける点に関しては安定しているが、投内連携が下手。肩は強いので、サードで使っている。
二遊間の多喜商山は息ピッタリである。多喜は肩が弱い分、暴投をしないようしっかり狙いを定め投げる。また声掛けが上手く、ポジショニングも完璧で正面の打球が多い。パワーがほぼないので、常に繋ぐことを意識している。2塁ランナーがいればとにかく右打ちなど、チームバッティングの申し子。が、スクイズだけは怖がりでまだ出来ない。頭が凄く良いという話を前に聞いたことがある。キャプテンの商山は、圧倒的な守備範囲と強肩でアウトにして魅せるマジシャン。ライナーやボテボテ、高いフライや左右ギリギリのゴロでもお構いなし。ピッチャーを救う鉄壁の遊撃手。打撃はそこまでだが、選球眼がよく無駄なボールを振らない。チームに点を与えたいというキャプテンシーや、多喜にチャンスで回してやりたいという絆の部分からか、ノーランナーの時によく出塁できている記憶がある。そしてその仲のいい多喜とはどうやら幼なじみらしい。多喜を野球に誘ったのも彼だという…
センターは俊足巧打の切り込み隊長副キャプテン花神。多喜ほどでは無いが、他の男部員と比べ力こそないものの、上手くボールに合わせ、ヒットゾーンに持っていくバットコントロールの上手さと、隙を突く走塁、また足を活かした守備で左中間や右中間のフライも悠々と取ってみせる走攻守揃った高嶺の花。
この個性の多いチームを必ず県大会に導いて、後悔することなく夏を終えたい。
現時点スターティングメンバー構想と能力
人名 投打 ミパ走肩守捕 サブポジ
1.中 花神 左左 CFBDCD 左
2.右 五十嵐 左左 DDCAEE 右・左
3.投 早川 右左 ECCBDE 左
4.三 千代浦 右右 DBDBEC 一
5.遊 商山 右左 EDBABC 三・二
6.捕 伊地知 右右 FCCACB 三
7.一 南 右右 EDECGD 一
8.左 古川 右左 FECDDD 右・中
9.二 多喜 右右 DGCFCA 遊・中
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