ショッピングモールの中にあるカフェの一角。

ドリンクを飲みながら今の状況を確認する


「すぅぅ……」


「はぁ……」


俺の前には例の美少女が取り残されていた。

不機嫌そうな表情を隠そうとしない少女はつまらなさそうにスマホを触っている。

俺はかなりピンチに陥っていた。





◇◆◇◆◇◆◇




「ちょっと今いいかな?」


「えっと……」


「君たちが気になってね。声を掛けたけど迷惑だったかな?」


彰人がおさげの子に声を掛けると生まれた小鹿のように身震いをして身を縮ませた。

それをかばうようにギャルっぽい子が彰人の前に出る。


「なによあんたたち!」


「そうそう、これくらい強情な女じゃねぇとつまんねぇよなぁ?」


「ひっ!」


しかし、この流れはお決まりのようで、達樹がギャルの肩に手を回し、強引に抱き寄せる。

その行動力に俺は羨望の眼差しを送る。

そして、俺とは真逆の怯えた視線を送るのがおさげちゃんである。


「ああ、ごめんね?怖がらせちゃって……」


と、彰人がおさげちゃんのフォローに入った。

達樹はギャルっぽい子の抵抗を受けていたがびくともしてない様子。

周りの視線も集まるが達樹の見た目に見て見ぬフリをする人が多くいた。


「それで、何用かしら?」


「えっ……」


「えっじゃないわよ。明らかにナンパ目的でしょ」


「えっと……」


急に声を掛けられた俺は戸惑いを隠せずにいた。

というか、女子と話したのは中学2年以来なかったのでどうやって話せばいいのかわからないのだ。


俺は助けを求めるように彰人と達樹に視線を送るが……。



「やめて!」


「んだよ、強引にされるのが好きなんだろ?行こうぜ」


「ちょ!触んなし!引っ張るな!」


達樹が強引にギャルっ子を連れて行った。

かく言う彰人も……。


「へぇ、二人とは幼馴染なんだ?」


「は、はい……。昔から二人に助けてもらっていて……」


「もしよかったら二人でお話しない?おいしいカフェ知ってるんだ」


「でも……私みんなとお出かけする予定あるので……」


「そうなの?」


「はい……。秋保ちゃんたちとカフェに行く予定に……。って柚葉ちゃんは?」


ようやく周りを見る余裕が出来たのかおさげちゃんが振り返ると既にギャルっ子がいなくなっていることに気が付く。

そして自然と残っている美少女のほうへ視線を向ける。


「いいわ、行ってきなさい」


「でも……」


「男子に耐性つけるんでしょ?いい機会だから行きなさいよ」


「……ありがと」


「じゃあ了承を得たってことで。いこっか?」


「はい……。秋保ちゃんごめんね……」


「いいわよ」


そういって彰人はおさげちゃんを連れて行った。

というか、この美少女は秋保っていう名前なのかな?


「それで、私はあんたに付き合えばいいのかしら?」


「まぁそうなるかな……?」


「はぁ……」


誰かー!この暗い雰囲気どうにかしてください!!!


「とにかく移動しましょう、ここだと目立つわ」


「えっと、はい……」


美少女こと秋保ちゃんを先頭にショッピングモールのほうへ向かっていき冒頭に戻るわけだ。




「それで、誰狙い?」


「誰狙いとは?」


「柚葉なのか、結衣なのか。ああ、ギャルっぽいほうが柚葉でおさげのほうが結衣ね。あ、もしかして私?」


あー、そういうこと……。

どっち狙いなんだろ。


「だぶんどっちも……かな?」


「どっちも?あんたは余った私で妥協してるってわけ?」


「ちがっ!」


結局ナンパする経緯を説明することに。

途中冷めた視線をもらったがご褒美ってことで誤魔化した。


「結局おこぼれってことは妥協と変わらないじゃない」


「おっしゃる通りです……」


「最低ね」


「おっしゃる通りです……」


否定できねぇ!

いや、たしかにおこぼれとは言ったが、こんな美少女が残るなんて思わねぇだろ!

そういや、彰人は控えめな子がタイプなんだっけか。


「まぁどうでもいいわ、それで、これからどうすんのよ?ナンパしてきたくらいだから多少は楽しませてくれるんでしょうね?」


「申し訳ありませんがノープランでございます……」


グループで行動すると思ってたもん!

だれが単独で行動するなんて思ったかよ!


「はぁ……。あんた、名前は?」


「富樫颯真です」


「富樫くんね。私は柚木ゆずき秋保あきほよ」


「柚木さん……」


「名前のほうでいいわ。敬称も不要よ」


「秋保さん……」


「秋保」


「あ、秋保……」


「よし」


強引すぎる!

陰キャっぽい俺を揶揄って遊んでやがる!

でも、美少女が笑っているところを見れたのでヨシ!


「それで、富樫君ってなんで女の子と戯れたかったのかしら?」


「シンプルに彼女が欲しくて……」


「ナンパで出来る彼女なんて碌なのいないわよ?」


「え?」


「あたりまえでしょ?身持ちの軽い子だからナンパされてもついていくのよ。そんな子は決まってビッチに決まってるわ」


「ビッチ……」


ってことはあのおさげちゃんは既に彰人の毒牙に掛かっている可能性もあるってこと?!

でも、ギャルっ子は連れていかれたけど……。


「結衣はまだしも、柚葉は既に喰われているんじゃないかしら?あの子割と押しに弱いのよね」


そんなーーー!!!

あいつらばっかり良い思いしやがって!!


「まぁ正直二人がどうなろうと関係ないわ。それより今の状況をどうにかしないといけないわね」


「どうしましょうか……」


結局ノープランには変わりないのだ。

仮に達樹は既にホテルでおいしい思いをしていたとして、彰人のほうはどうだろうか。

いや、あいつは女慣れしてるから大丈夫なんだろうな。


「暇になったし付き合ってあげる。私で女の子慣れしなさいよ」


「いいの?」


「いいのよ。仕方ないでしょ?今日の予定があなたたちのせいでドタキャンになったんだから責任もちなさい」


「申し訳ありませんでした……」


結局俺は謝ることしかできませんでした。

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