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「それで天文部に入部したんだ」

 学校の帰り道に愛が雨にそう言った。

「うん。二人ともすごく喜んでくれた」

 夕焼けに染まる川の土手沿いの道の上を歩きながら、にっこりと笑って雨は言う。

「そこまでする必要はないと思うけど、まあ、そういうのもいいのかな? 確かにちょっとだけ楽しそうだし」

 ソーダ味のアイスを食べながら、愛が言う。

 雨も、愛と同じ水色をしたソーダ味のアイスを食べながら歩いている。

「愛も入部する? 音楽部と掛け持ちすればいいんじゃない?」

 雨は言う。

「私は遠慮しておく」

 にっこりと笑って愛は言う。

「そっか。残念」

 雨は言う。 

 それから二人は無言になって、いつものように二人の別れる道のところまでやってきた。

「じゃあね。また明日」

 雨に手を振りながら、愛が言う。

「愛。ちょっと待って」

 雨が言う。

「……? どうかしたの?」

「少しだけ話があるの。……水瀬くんのことで」

 真剣な表情になって雨は言う。

「それってさ、大切な話?」

 雨はうなずく。

 愛は少し考える。

 あまり、いい予感はしない感じだった。でも、水瀬くんのことで、と親友の雨に言われて、その話を聞くことを断ることは、どう考えても、愛にはできないことだった。

 ……どうせ、いつかはぶつかる壁なのだ、と愛は思った。

「わかった。いいよ」

 と愛は言った。

 それから二人は寄り道をして、夕焼けに染まる土手沿いの芝生の上で、少し話をすることにした。

 ……世界が、真っ赤な色に染まってるな。

 時刻は黄昏時。

 午後四時の赤い夕日に染まる世界を眺めて、愛は、その覚悟を決めた。

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