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「遠野さんは魂って、信じる?」

 水瀬くんはそう言った。

「魂?」

 急に魂の話をされて、雨は首をかしげながらそう言った。

「うん。魂。それと、幽霊とか」

「水瀬くんは魂があるって信じているの?」

 雨は言う。

「うん。どちらかというと信じている」

 水瀬くんは言う。

「やっぱり、少し変かな?」水瀬くんは口をへの字にする。

「ううん。そんなことないよ。別に変じゃないと思う」

 にっこりと笑って雨は言う。

「私も魂ってあると思う。……幽霊は、あんまり信じられないけど」

 ……実際にいたら怖いし、と雨は思う。

「僕も実は幽霊はあんまり信じてないんだ」

 ふふっと笑って水瀬くんは言う。

 珍しい、いつもクールな水瀬くんの子供っぽい笑顔だった。

 今日の水瀬くんは、大自然に囲まれた環境の中(なにせ周囲数キロが全部、緑色の木々の生い茂る山だった)、流星の降り出す直前の、田舎の澄んだ空気の中で見る、満天の星空の下で、気分が高揚しているのか、いつもよりも随分と子供っぽく見えた。(雨のよく知っている、地元の中学生の男の子みたいだった)

 その笑顔が見られただけでも、今日、天体観測に来てよかった。自分はラッキーだ、と雨は思う。

「遠野神社の言い伝えにあるんだ。そういうの」

「え?」

 自分の実家の話が出てきて、雨は驚く。

「遠野さんは知らない? お父さんから聞いたりしてないの?」

「ううん。知らない」

 水瀬くんの言葉に雨は首を横に振った。

 遠野の言い伝えの話は聞いたことがあるけれど、そんな魂だとか、そういう話は聞いていなかった。

 神社に厄災で亡くなった多くの人たちを神様として祀ったというのが、水瀬くんの言っている、魂、……の話なのだろうか?

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