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「へー。五月の連休に天体観測にいくんだ」
夕食の時間に、雨から天体観測に行きたいんだけど、と言う話を聞いて雪は言った。
「お父さん。みんなと一緒に行ってもいい?」
「いいよ」
雨の言葉にお父さんはご飯を食べながらそう言った。
「ついてくる先生って誰?」
「朝見先生」
雨は言う。
「朝見先生って、あの美術の朝見真心(まごころ)先生?」
「うん。その朝見先生」
お味噌汁を飲みながら、雨は言う。
「へー」
サラダを食べてから、雪が言う。
「雪のときも、確か朝見先生だったよね?」お父さんが言う。
「そうだよ」
雪が答える。
「え? お姉ちゃんも天体観測行ったの?」
少し驚いて、雨が言う。
雪が天体観測に出かけたという話を、雨は姉である雪から聞いたことが今まで一度もなかった。
「……うん。まあ、ね」
天井の明かりを見ながら雪は言った。
「どうして言ってくれなかったの?」雨は言う。
「どうしてって、別に理由なんてないよ。たぶん、たまたま言わなかっただけだよ」と雨を見て、にっこりと笑って雪は言った。
そんな二人のことを、お父さんは幸せそうな顔をして、お茶を飲みながら見つめていた。
夕食のあと、雪と一緒に後片付けをした雨は、お風呂に入ったあとで、それからもう亡くなってしまったお母さんの写真の前に移動して「お母さん。みんなと天体観測に行ってきます。その中には水瀬くんもいます。きっと楽しい時間になると思います。そのときのことは、またあとで報告します」と言って、それから自分の部屋に戻って、ベットに入って就寝した。
星が、すごく綺麗な夜だった。
(……雨は、いつの間にか上がったみたいだ)
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