秋色「Under the Storm/嵐の日」


・秋色「Under the Storm/嵐の日」

https://kakuyomu.jp/works/16818093080123803806


 豪雨警報が出た日の夜。地下街につながるマンションで暮らす「僕」は、ベッドの上で、雨に関する思い出を振り返る。眠る直前のあの感覚を丹念に描いた現代ドラマ短編。

 秋色さんは、二〇二一年度の同題異話からコンスタントに参加してくださいました。ほろ苦くもどこか優しい、現代ドラマが多い印象です。そして、本作が今年度の同題異話では初参加でした。


 本作も、ほろ苦く、でもなんだか優しい雰囲気が、全体を優しく包んでいます。外は雨が激しくて、ここは大丈夫なはずだけど、どこか不安な感じ、そんな中で眠ろうとしたときに浮かんできた、思い出などの手触りが、とても共感できます。

 主人公の現状について、他人から見た印象ですが、不幸のどん底でも、幸せの絶頂でもない、かなりニュートラルなような気がします。そんな時に振り返る思い出ですから、比較的客観的に眺めているのかもしれません。


 浮かんでくることが、いいことばかりではないのもミソだと思います。それでいて、酷く落ち込むことでもないような、ただただ、なんだか気になってしまう、不意に思い返してしまうような出来事。そこら辺のリアリティが大変好ましいです。

 そして、登場した人たちの現在を、主人公は全く知らないというのもいいですね。ふいに、人生が交差した誰か。それを思い出せる日もあってもいいんじゃないかと感じました。


















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