第二話 リヒトの日記(魔法開発編)

【1日目】

せっかくだから、日記をかいてみることにした。

こうすると、かこを思い出せていいよって、お父さんが言ってた。

5日前、回復魔法を使えるようにしようと思った僕は、お父さんとお母さんにきいてみた。

すると、じゃあ適正検査というのをうけようってことになって、きのうお父さんとお母さんがお金を払ってうけさせてくれた。

そしたら、光属性に適正があるって言われた。

回復魔法の習得がしやすいって言われて、うれしかった。

魔法の本は、向かいのおじさんがくれた。

これからがんばろう。


【2日目】

むずかしい。

お父さんにいろいろ教えてもらいながら、読んでみたけど、むずかしかった。

だけど、あきらめない。

だって、Sランク冒険者になりたいから。


【20日目】

ようやく、本の内容がりかいできるようになった。

小さいけど、光の玉を魔法でつくれた。

そしたら、お父さんがすごいってほめてくれた。

この調子でがんばろうと思う。


【50日目】

魔法陣の仕組みが、理解できるようになってきた。

線がこうで――(以下、魔法陣の説明がだらだらと書かれている。結構読みにくい)

――こんな感じ。

簡単な回復魔法も使えるようになったし、後はこれをどんどん良くしていけば。


【100日目】

新しい本をもらった。

前の本より、むずかしい。

だけど、まったく分からないって感じじゃないから、なんとかなりそう。


【160日目】

最近魔法の練習をやりすぎて、剣をあまりやっていないことに気づいた。

久しぶりにやってみたら、ちょっと動きが悪くなってた。

やばい。ちゃんとやらないと、弱くなっちゃう。


【365日目】

この日記をかきはじめてから1年たった。

身長が、前とくらべて5センチぐらいのびた。

回復魔法は、けっこう順調に習得できてて、《自動回復オートヒール》っていう僕にぴったりの魔法を使えるようになった。

発動しているあいだは、きずが出来ても自動で治してくれる魔法。

今はまだまだだけど、これをどんどんよくしていけば、いつかなれる。


【500日目】

今までは小さなきずをわざとつけて、それに魔法を使って効果をたしかめていた。

だけど今日、はじめて切りきずをわざとつけて、魔法を使った。

けがって、考えてみると、あんがいしない。

ゆびの先をかるく切ったんだけど、けっこう痛かった。

でも、これからはたくさんするし、なれた方がよさそうだ。


【800日目】

さいきん、ようやく痛みになれてきたような気がする。

すぐに治せるっていう安心感があるからだと思う。

あと、《自動治癒オートリジェネ》っていう、《自動回復オートヒール》の上位互換ってやつを習得できた。

次から、きずはもう少し大きいやつにしようと思う。


【999日目】

自分でけっこう大きめのきずをつけていたのがお母さんに見つかって、めちゃくちゃ怒られた。流石にあの大きさのきずは怒られちゃったけど、実力と家族会議で、条件つけられちゃったけど、納得させることができたぜ。


【1192日目】

ついに自動回復系の魔法の中で1番と言われている《自動再生オートリバース》を習得したぜ!

お父さんとお母さんだけじゃなくて、村の知り合いもすごいって言ってくれた。

悔しそうに遠くから見ているあいつらを見て、ちょっとすっきりした気分になったのは、内緒だぜ。


【1313日目】

俺、最近気づき始めたんだけどさ。

傷が無い時も、ずっと《自動再生オートリバース》を使い続けるのって、効率悪くねって。

どうせなら、傷がついた瞬間に、自動で回復魔法が起動して治癒するって感じにした方がいいと思った。


【1582日目】

魔法陣を身体に刻む事で、使用できる魔法の方向性が偏ってしまう代わりに、その魔法の効果を高められると知った。

やりすぎると、逆に強化魔法が使えなくなってキツそうだから、少しずつやろう。


【1867日目】

うーん。

中々上手くいかない。

どれもこれも。


【2024日目】

遂に傷をトリガーに回復魔法を発動させる方法を開発した。

それ専用の魔法陣を、身体に刻むんだ。

調べるんじゃなくて、自分で作る方が早かったかな?

まーでも、お陰で色々な知識を得られたからいっか。


【2424日目】

うーん。身体に刻み込む魔法陣、もっといいのないかな?


【2856日目】

16歳の誕生日を迎え、成人した。

村の皆は、それぞれ選んだ道に向かって進み始めている。

俺も早く冒険者にならなければ……だけど、あと、少しなんだ。

あと少し、何か思いつけば……!


【2929日目】

魔法陣を観察してたら、面白い事に気づいた。

まず、回復魔法はその人の自然治癒速度を魔力で高速化させる事で傷を再生する。

その為、体質が人によって違う以上、そこに体質を読み取る術式が入っているんだ。

でも、俺が求めているのはあくまで自己回復魔法。

なら、自分の体質をその術式では調べられないぐらい徹底的に調べた後、その部分を改変すれば、俺だけの最強自己回復魔法が作れるのではないだろうか?


【3000日目】

実験は成功。

本来よりも、確実に良いものが出来た。

試しに背中に刻んだ魔法陣にそれを登録して、腕を肩から斬り落としてみた所、10秒で新たな腕が生えてきた。

……いや、戦いにおける10秒は長い。

もっと、もっと……!


【3131日目】

お母さんに、「詰め込み過ぎよ。鏡を見たら、リヒトもそう思うわよ」と言われたので、久々に鏡を見てみた。

そしたら、随分と生気の無い顔をしてて、驚いた。

確かに、最近外にも出てないな。

このまま職に就かないのも駄目だし、運動も兼ねて村の手伝屋のようなものをしてみるか。あと、剣の修行も再開だ。


【3173日目】

確かに、俺は詰め込み過ぎてたみたいだ。

身体は自己回復魔法を使い続けたお陰か、健康そのものだったのだが、本当の健康とはそういう意味じゃ無いと気づかされたよ。

日記も読み返してみたんだが……昔の俺、だいぶ幼い言い方だな。あと、ちょっと前まで日記じゃなくて作業書みたいになってた。

読み返してみたら、気持ち悪ってなったわ。

あと、研究に今まで以上に集中できるようになった気がする。

やっぱ俺って、外で活動するのが好きなんだなぁ。


【3535日目】

元となる自然治癒速度の高速化部分の術式。

ずっと既存のものを自分なりに少しアレンジしたものを使っていたのだが、根本的に変えた方がいいと最近思えてきた。

どう変えれば……あー上手く言葉に言い表せない。


【3939日目】

やっと完成した!

魔力を元素配列術式で組み換え、そこに自分自身の身体をデータ化して組み込む事によって、魔力を自分自身の肉体に転換する事が出来る術式を開発したぞ!

欠損した部位を、魔力と補助媒体となる少量の肉体を用いて生成する。

今までの自己回復魔法の研究実験の積み重ねが無ければ、もし最初にこの事に気がついていたとしても、完成させるのは不可能だったと思う。

まだ試作段階だけど、現時点で既に2秒足らずで腕を再生。更には、下半身を丸々失っても4秒で再生。

あー凄く嬉しい!

これを更に突き詰めれば、きっとSランク冒険者を目指せるだけの人になれるぞ!


【4242日目】

背中に刻んだ魔術式や発動する魔法の調整も、大分纏まって来た。

斬られた部分が普通に接続出来そうだったら、そっちの方が効率良いって事で、自動でそっち方向に切り替えてくっつけるようにしたのが大きな追加かな?

で、再生速度は腕の再生が瞬き1回程。心臓を刺しても無事だ。

あと、再生時に剣とかが刺されたままだと邪魔になるって問題があったけど、そういうのは自動で排出されるように魔法陣を弄っておいた。

この魔法を、俺は《不死の奇跡イモータル》と名付けてみた。

いやーここまで来れば、そろそろ冒険者になっても大丈夫かな?

気づけば、傷つく事に対する恐怖心も一切無くなっているし、実験の副産物として戦闘に使えそうな魔法も開発出来たし。


【4260日目】

そろそろ20歳の誕生日だし、その日を村からの出立日にするか。

それまでは、ひたすら鍛錬だ。


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珍しい日記形式にしてみました!

こっちの方が分かりやすいかな~と唐突に思いつき、書いてみたんですよね。

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