沈丁花禄郎でございます!

のっぴきならない男

第8話

episode8 「GO MY WAY」


沈丁花は町内を歩いていた。

歩いてる途中に偶然デヴ夫人と出くわした。デヴ夫人は町内会で大きな発言力のある

大金持ちの町内会のドンである。

沈丁花「ああ、どうもこんにちは!」


デヴ夫人「あら、沈丁花さん、ごきげんよう。どこに行かれるんですの?」と上品に尋ねた。


沈丁花「ああ、松の湯に行くんですよ」と沈丁花は満面の笑みを浮かべた。


デヴ夫人「あーら、それならわたくしの家のお風呂に入ればいいじゃない」とデヴ夫人の優しさから沈丁花を招待した。


沈丁花「いいんですか?」


デヴ夫人「遠慮することないですのよ」と優雅に微笑んだ。


沈丁花「ではお言葉に甘えさせてもらおうかしら。すぐ帰りますので.」と嬉しそうに言った。


沈丁花はデヴ夫人の超豪邸に足を踏み入れた。


沈丁花「いやー!流石デヴ夫人のお家だけあってすごい広いし大きいし豪華ですなー」と感嘆の言葉を漏らした。

デヴ夫人「わたくし、お紅茶をいれますので、ゆっくりお風呂に入りあそばせ」

沈丁花「ありがとうございます。遠慮なくお風呂頂戴いたします」

そう言って沈丁花はお風呂場に入って行った。


30分が経過した。


デヴ夫人「沈丁花さんて結構長風呂でいらっしゃるのね」と微笑んだ。


紅茶はとっくに冷めていた。


50分が経過した。


デヴ夫人「あーら、随分と遅いわね。大丈夫かしら」


デヴ夫人は風呂場に様子を見に行った。


デヴ夫人「沈丁花さん?大丈夫ざますか?」と風呂場のドアを開けた。

そこには浴槽いっぱいの泡のなかでくつろぐ沈丁花の姿があった。


沈丁花「すみません。すごく気持ちよくて。こんな大きなお風呂に入ったことなかった

    もので」

と満面の笑みを浮かべた。


デヴ夫人「それはようございました。でもそろそろお出になられては?」と提案した。

沈丁花「わかりました。そろそろ出ますね」

デヴ夫人「待ってますわよ」


風呂から出た沈丁花は、紅茶を飲んで、出されたローストビーフをつまみながら、デヴ夫人と楽しそうに談笑していた。


小一時間くらい談笑して沈丁花は帰ることになった。


デヴ夫人「またいつでもいらしてくださいね」

沈丁花「ありがとうございます。またお風呂頂戴にあがります」


デヴ夫人は沈丁花のお風呂を頂戴するという言い回しになにかしらの違和感を覚えていた。


数日後


町内の一角で5、6人の御夫人同士の井戸端会議が行われていた。

デヴ夫人「この前、沈丁花さんがお風呂に入りきたんですのよ。普通人の家のお風呂で  

     小一時間もくつろぎますこと?」

近所のご婦人「そんなにですか?」

デヴ夫人「そうなんざますのよ。浴槽を泡だらけにして。ここは日本ですのよ。おまけ                       なんてうたってましたのよ。」

近所のご婦人「沈丁花さんがですか」

デヴ夫人「そうなんざますのよ。ローストビーフを8枚も召し上がって帰って行きました  

     のよ.」

近所のご婦人「8枚も……」

デヴ夫人「化粧室もビシャビシャにしてますのよ」

近所のご婦人「イヤですねー」


デヴ夫人「またいつでもいらしてくださいとワタクシ言いましたけど…

そしたら次の日、ワタクシの家の前で、沈丁花さんが『あら、偶然ですね』なんて言ってお会いしたんですの。』


近所のご婦人「そんな偶然あるんですね」


デヴ夫人「ワタクシ察しましたですよ。洗面器にシャンプーみたいいなのと髭剃りみたいなのを抱えてましたから」


近所のご婦人「そんなことがあったんですね」


次の日


スナックにて。

掟カローラ「ジン!デヴ夫人がおまえの悪口、近所に流してたぞ」


「そうなんですか。別にそんなの気にしませんよ。ほっとけばいいんじゃないですか」と沈丁花は微笑んだ。


掟カローラ「そうだな。おまえは心が広いな」と感心した。


数日後


町内会室の天井の電灯を変えに沈丁花は姿を見せていた。

偶然デヴ夫人も居合わせていた。


電灯を変えるため、沈丁花は脚立を取り出して登ろうとしていた。


沈丁花「デヴ夫人、脚立を手で支えてもらっていいですか?」

デヴ夫人「ワタクシが?デスノ?」

沈丁花「ええ」


沈丁花「もう少し、上を持っていただけますか?」

デヴ夫人「こうですの?」

沈丁花「もうすこし右です」

デヴ夫人「こうかしら?」

沈丁花「もう少し上を」

デヴ夫人「えーと、こう……えー……」と言いかけた瞬間、偶然にもデヴ夫人お顔の極めて至近距離で爆音が鳴った。


沈丁花「違うんです!違うんです」


偶然の沈丁花による放屁だった。


デヴ夫人「あーーらもうーいやーーですわぁ。なんてことしてくださるの?あーた。それで、もの凄く臭いですわ…」と言い残し夫人の意識は遠のいて気絶したのだった。



その一部始終を見ていた掟カローラと絵梨奈の頭の中に偶然、中島みゆきの『ファイト』が流れた。


掟カローラ「ダメだありゃ.そういえば昨日ジンの奴、肉のハナマサで大量の豚肉とさつまいもを買い込んでたな」


絵梨奈「よっぽど悔しかったんですね……」と静かに呟いた。


そんなこともつゆ知らず、ライママは明日に備えて十分な休養をとっていたのだった。


ep9につづく…

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