第48話 たんぽぽ会  2 王太子目線

俺は翌日、熱を出して寝込んだ。回復すると俺は図書館で外交関係の書籍を読み、文書の保管庫にこもり、貿易収支、農業生産高の資料を調べた。


俺が犬をやっているとき、「次は小麦を咥えて来い」とか「草を大事にな」「今度従兄弟が結婚するんだ。糸繰りよろしく」とか言い合ってはげらげら笑っていたから、なにかあると思ったんだ。


父上は食事の時、俺を悲しそうに見たがなにも言わなかった、母上は


「やんちゃしたんですって、みなさまに甘えすぎですよ」と笑いながら言った。




昼間は調べ物で気が紛れたが夜は悔しさと怒りで眠れなかった。そのうち俺は犬になって、それも大きな犬になってやつらを追い回すことを想像するようになった。


俺は泣きながら逃げるツーチャンを追いかけ、転んだツーチャンを踏んだり、尻に噛み付いたりすることを想像した。


ある日、夢のなかにツーチャンが出て来た。俺はいつも通り追い回し転んだツーチャンの尻に噛み付いた。


必死に起き上がり逃げるツーチャンを転がし、仰向けになったツーチャンの上に乗って人間の言葉で


「いいか、小麦はもう、いりません」と言え、我が王国から不当に取り上げるような意地汚い真似をするな・・・・


逆らえば次はどうなると思うか?知りたいなら、逆らってみろ・・・ガォーーーと吠えたら自分の声で目が覚めた。


なんだかスキッとしていた。



今年はノーステラ皇国が、小麦の買い上げを控えたと聞いたが、それ以上のことはわからなかった。


さて、次の年のたんぽぽ会に俺はおもちゃを持って行かなかったが、エルプーンがボールを用意していた。


俺はお座りをしたり、「ワン」と吠えたりボールを追いかけて走った。


ツーチャンは少し遠慮している素振りだったが、それなりに楽しそうだった。




俺は悔しさと怒りとちょっとの期待で眠れない夜を過ごしたが、ある日、エルプーンが夢に出て来た。


俺は犬になったあいつにお座りをさせ、下手だと馬の短鞭で叩いた。「ワン」と鳴くように命令し、最後は足で耳の後ろを掻けと命令し、馬の短鞭でバシバシ叩いた。


人間のように泣くから、「キャイン、キャイーン」と鳴けと命令しているうちに目が覚めた。



今年は、ノーステラ帝国とアズマ法皇国が小麦を買わなかった。セントア王国は食料不足にならない冬だったそうだ。


ちなみにアズマ法皇国はシルクも買わなかったので、適正価格で売ることができたそうだ。農家は娘を売らずに済んだと聞いた。



それからも、たんぽぽ会ではみなさんに遊んで貰った。お礼は夢のなかで丁寧にした。


ほんとうに夢に入っているかはわからない。確認のしようがないし・・・


夢の中で犬としてはっきり上下関係を理解させてからは、外交交渉で負けることはなくなった。


我が国を訪問する時の馬車列は短くなった。


あいつら軍をすすめる事を仮定して我が国の道路、地形を調べまくっていたから・・・・


入国できる人数をどんどん減らしていったんだ。



周りの三カ国は確かに大国だが、農業資源が少ないのだ。そしてセントア王国を占領しようとした事もあるようだが、一国が攻めると一国が防衛戦に加わるので決着がつかず、農地が荒らされたセントア王国からの小麦がなくなって四カ国が飢えると言った事態が起こり、手出しをしないのが一番だとなった。これが平和の真相だ。


つまり、セントア王国の土地に手を出さないが、土地が産みだした物は遠慮なくいただくやり方が定着したのだ。


そういった、経緯でセントア王国は三カ国の中心で生き延びた。だが、三カ国に好きにされてぼろぼろになった。


ここで俺が登場した。


多分、俺の能力は体の接触をした相手の夢に入り込めることだと思う。そして相手との間に距離が必要なのかな?日数が必要なのか?


たんぽぽ会当日は、夢で会えないからな。



たんぽぽ会で俺の頭をなでる。国に戻る。どこの国の王宮も馬車で七日とか八日とか、かかる。


国に戻った頃、夢のなかでこんにちはって事だと思う。確証はないが・・・・


ここ数年のたんぽぽ会はお茶を飲みながら、チェスなどのゲームをやり、世間話をしたり婚約者のことを話してもらったりと和やかに過ごしている。


ただ、最近どこの国も国境がきな臭い。あいつらに誰が、ボスなのか。もう一度はっきり教えてやる。しつけ直しだ・・・・・俺はお茶に混ぜてやつらに飲ませた。



リアルでふっさふさを見たかったが、夢で会えたからいいや。


ティーナって最高だよな。

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