これからも僕達は 外伝4

春渡夏歩(はるとなほ)

これからも僕達は 外伝4

生きている限り…

再会

 当直明けのディープは、エレベーターで病棟に上がりながら、小さく欠伸をした。

(ねむ……。そろそろ当直もキツくなってきたなぁ。若い頃みたいには、いかないな)


 本来、そこまでする必要はないのだが、夜間救急で診て、入院とした患児の様子を、いつも帰宅する前に確認することにしていた。

 病棟には、研修で在籍したときの顔馴染みのスタッフがまだ何人かいる。問題ないことを確かめて帰りがけたとき、スタッフのひとりから声をかけられた。

「ドクターブルー、知ってましたか?」

 循環器部門長が新しく赴任することを聞いたが、特に興味がなく、聞き流していた。

「そうなんだ。あまり接点が無さそうだけどね」


 *


 医療スタッフ、患者さん達、補助ロボット等々、

 多くが行き交う病院のロビーで、

「あ……」

 彼女は足を止め、ふりかえった。


 視界の隅をよぎって、すれ違ったその人は……。


 遠ざかる後ろ姿。明るい茶色の髪。


(あれは……!)


 記憶がいっぺんによみがえってきて、彼女は温かいもので満たされるのを感じた。新しい職場へ赴任する緊張感が少しほぐれた気がした。



 

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