修学旅行⑬
俺は精一杯の力でチルハを刺した。
人を実際に刺すのは初めてだった。
ナイフからは生々しく感触が伝わってくる。
俺がチルハと接触したのと同時に教団側の攻撃が止んだ。
(チルハ、ごめん…… )
俺は刺したことを内心後悔していたのかもしれない。
チルハは俺を見て泣いていたからだ。
「なんで泣いてんだよ 」
「なんでチルハは教団に忠誠を誓ってるんだ ?
教えてくれ 」
俺はチルハに刺したナイフを動かせないまま聞いた。
「メルト、お前に今から俺のお母さんのことを伝える」
「って言ってももう俺に残された時間は少ない 」
「1回しか言えないから絶対に聞き逃さないで 」
チルハは刺された痛みを感じてか、途切れ途切れに言った。
「俺のお母さんは5年前、この教団に連れ去られた 」
「この組織の幹部と合えば何か分かるかもしれない 」
「お母さんのこと、メルトに頼めるか? 」
チルハの涙が俺の視界の先にこぼれ落ちた。
「後ちょっとだったんだけどなぁ…… 」
チルハはボソッと呟いた。
俺はその時決めた。
チルハのお母さんの真実を明らかにする。
そしてナルノス神教を'ぶっ潰す'
チルハはお母さんのためにこの組織に潜り込んで、頑張ってたんだ。
俺はチルハの意思を継ぐことを決めた。
「チルハ、お母さんのこと俺に任せてくれ」
「お前の分までこの組織を'ぶっ壊す'」
俺がそう言うと、チルハは何も言わずただ、にっこりと笑った。
気づけばチルハは俺に倒れてきていた。
「チルハ、」
チルハは息を引き取った。
俺はその瞬間には足が動いていた。
(この組織のヤツら、まずはお前らからみんな殺ってやるよ )
俺が黒装束の男たちを睨みつけると、意識の中に何か声が聞こえてきた。
(これはチルハの )
俺はこの声の正体にすぐに気づいた。
そう、俺はチルハの能力を奪っていた。
対象1人の心の声が聞こえるらしい。
もしかすると、この世界では倒した相手の能力を'奪う'ことが出来るのかもしれない。
チルハは俺の中で'生き続ける'
だから、チルハ。
お前の叶えられなかったこと、一緒に果たそう。
俺は前へと足を踏み出した。
~~~~~~~~~~~~~~~~~
続く
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